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【TPP漂流~識者に聞く】(6)食の安全「奈良県立医科大教授 今村知明氏」

  • 2017年1月29日 13時07分

<いまむら・ともあき>
 1964年大阪府生まれ。88年関西医科大卒。93年東大大学院博士課程修了。旧厚生省、東大病院助教授を経て、2008年から奈良県立医科大教授。主な研究テーマは食品防御の具体的な対策の確立と実行検証に関する研究など。

WTOの下、リスク不変
 アメリカがTPP(環太平洋連携協定)からの離脱を表明したが、仮に今後TPPが発効されたと仮定した場合でも、食の安全に関しては基本的に影響はないとみられる。食の安全性に関わる規則の部分は、WTO(世界貿易機関)に含まれるSPS協定にのっとるということを宣言しているためだ。

新たな緩和ない
 SPS協定とは、各国が食品の安全性を確保したり、動物や植物が病気にかからないようにしたりしながら、公正な国際貿易を担保するための国際的なルールのことで、TPP交渉を進めたからといって新たにルールが緩和されるということはない。

 WTOが発足した当時に緩和されたものはたくさんあり、その代表的なものは消費期限だ。昔は食品に製造年月日を記していたが、それが消費期限の表記になった。これはSPS協定の流れを受けており、本をただせばコーデックスという国際食品規格基準委員会で決まったものだ。

 すなわち、影響を受けるというのは当時WTOに加盟する段階であったことで、今回TPP交渉に参加したとしても日本の食品安全基準を緩和するということにはならない。

 遺伝子組み換え食品を例に挙げると、WTOの中で許容できる範囲に一定程度制限をかけているので、今回のTPPでWTOのルールに基づくことが決められている以上、規制緩和を迫られるのではないかという議論が起こることには疑問がある。また日本が輸入に頼っているアメリカの大豆やトウモロコシの多くは遺伝子組み換えで、それを止めることは日本の食糧危機を招くことにもつながりかねない。

 2国間FTA(自由貿易協定)については実際に交渉が始まってみないと分からないが、日本政府の立場としては食に対してはコーデックスの基準を順守するとみられ、その線は崩さないだろう。

 今後の展望として、食の分野ではTPP交渉が進んでも現段階と変わらないとみられる。ポストハーベスト農薬や残留農薬などの問題もTPPだから発生するのではなく、WTOの時点ですでに起こっていたのだ。

検査体制充実を
 ただ、日本では外国から輸入される食物の検疫体制が十分でない。検疫所の食品担当職員は国内全体でも500人しかおらず、5000人以上いるアメリカと比べても少なすぎる。日本の食料はカロリーベースで6割程度を輸入に頼っているため、それを500人でチェックするというのは無理がある。そのため禁止されている農薬などが含まれる食物も入ってくる可能性があり、もっと人を投入し充実した検査体制をつくるべきだ。(おわり、川野遼介)

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