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【TPP漂流~識者に聞く】(5)法律「弁護士 三雲崇正氏」

  • 2017年1月28日 13時27分

<みくも・たかまさ>
 1977年名古屋市生まれ。東大法学部卒。弁護士。日本の四大法律事務所の一つ「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」の勤務経験があり、渉外事件の紛争解決に精通する。都内に事務所を持つ。「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の弁護団所属。

主権犯すISDS条項
 農業、医療、食の安全などあらゆる分野で地域の事業者を優遇した場合に他国の企業から訴えられ、多額の賠償金が請求される可能性がある。日本政府の見方は甘い。

多額の賠償金請求
 TPP(環太平洋連携協定)で最も大きな問題が「ISDS条項」。投資家が相手国の協定違反で損失を被った場合にその国を仲裁という方法で提訴できる。他国と自国の投資家を同じように扱う「内国民待遇義務」を柱に、先進国が法制度が不備な国に安心して投資できるようにとの狙いだった。

 NAFTA(北米自由貿易協定)に盛り込まれたことを機に脚光を浴びたが、本来の狙いとは全く別のものに変容した。互いの投資家が他国を頻繁に訴え合い、米国が訴えた例では、カナダに日本円で約6億円の支払いが命じられた。

 投資家の訴えに判断を下すのは主に世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターの仲裁廷。案件ごとに3人の仲裁人が判断するが、特定の弁護士に仕事が集まる傾向があり、「仲裁村」ともいえるコミュニティーができている。ある調査によれば、特に有力な仲裁人15人が2015年までに行われた案件の55%に関与し、係争額が40億ドル以上の案件には75%も関わっている。

 今まで投資家が勝った仲裁で米国が負けたケースはない。なぜか。表向きは分からないが、仮に訴訟国家の米国が仲裁に負け、制度が利用されなくなれば仲裁という産業が廃れ、仲裁人の仕事がなくなる。このようなバイアスがかかりやすいことは指摘されている。

 国の主権を越えて、民主的ルールが変えられてしまう危険も。場合によっては国の裁判所すら越えてしまう。米石油大手シェブロンがエクアドルで起こした環境汚染。被害住民の提訴に、同国の裁判所は同社に賠償を命じたが、同社は仲裁を使って国に判決の執行を止めさせた。日本に置き換えれば、東京地裁の判決を安倍晋三総理が止めるということ。三権分立の大原則が崩れてしまった。

政府の楽観視危険
 日本も他国と同条項が入った協定を結んでいるが、政府は「これまで訴えられたことはない」と楽観視している。よく考えれば当たり前。日本が先進国、相手が途上国という立場の協定が多く、日本が投資する立場だった。米国のような仲裁を使ってきた投資家が多くいるような国との協定は初めてで、訴えられないことは考え難い。

 それぞれの国が発達させてきた合理的な司法制度を尊重するべき。投資で損失を被った場合は、その国の裁判所に訴ればいい。米国との協定に同条項だけは含めてはいけない。賠償金として払われるのは国の税金だ。国の主権を無視した治外法権となんら変わらない。(高津祐也)

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