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【TPP漂流~識者に聞く】(4)労働「横浜国立大名誉教授 萩原伸次郎氏」

  • 2017年1月26日 13時17分

<はぎわら・しんじろう>
 1947年京都市生まれ。76年に東大大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。横浜国立大経済学部助教授、教授、大学院国際社会科学研究科教授などを経て、2013年4月から現職。「TPP 第3の構造改革」(かもがわ出版)、「TPPと労働者、労働組合」(本の泉社)など著書多数。

自動車産業に黄色信号
 トランプ氏がTPP(環太平洋連携協定)からの永久離脱を表明した背景には、1994年に米国、カナダ、メキシコ間で発効されたNAFTA(北米自由貿易協定)の教訓がある。自動車産業を例にすると、米国の自動車メーカーが安価な労働力を求めてメキシコに自動車の生産拠点を移し、その結果、米国の雇用が失われた。TPPはアメリカにとってNAFTAのアジア太平洋版になりかねないと考えたのだろう。

 “寂れた都市”と呼ばれる中西部のペンシルベニア州がトランプ氏を当選に押し上げたように、トランプ氏はいま一度、国内に雇用を取り戻そうと躍起になっている。米国自動車大手のゼネラルモーターズやフォードに対して輸入に関税の掛からないメキシコで生産する動きを非難したことはその表れであり、日本だとトヨタ自動車が約10億ドル規模の自動車工場をメキシコに新設する計画を打ち出したことについて名指しで批判していた。

発効なら経済停滞
 トランプ氏が米国の自動車産業を守るため、日本が米国の牛肉を輸入する際の関税と同じように、日本の自動車に対する関税を現状の2.5%から38%に引き上げるよう圧力をかけてくる可能性も否定できない。TPPの行く末が不透明になっただけではなく、日本の自動車産業に黄色信号がともっていることは無視できない。

 トランプ氏が反対するTPPを消費者の立場でみると、外国から日本に安い食べ物が入ることで食料品の価格が下がるというメリットはある。だが、それと同時に賃金も下がるため、雇用は増えない。

 今の日本は消費増税の波にのみ込まれ、消費の動きが低迷する深刻なデフレ状態にあることは確かだ。

 仮にTPPに参加すればその傾向はさらに強まり、国内の企業が抱える360兆円余りの内部留保も設備投資に回せず、日本経済が停滞の一途をたどるという未来が見えている。

地方の賃金向上を
 こうした現状を打破するためにも、地域循環型の経済をつくる必要がある。つまり、地域で生産したものは地域で消費し、そこから外に販路を広げていく戦略を立てなければならない。その際は商品の安売り競争に参入するのではなく、遺伝子組み換えに頼らず安全で安心な農畜産物を生産している十勝であれば、「十勝産」の銘柄を前面に押し出して、ある程度の価格で売っていくことが求められる。

 それと、日本経済の底上げを図る上で最低賃金の向上は重要だ。都市部の大企業に比べて地方の中小企業への影響は大きいが、政府はそこに財政を投資すべき。地方から率先して最低賃金の引き上げを進めることによって消費が上向き、企業による設備投資が生まれて雇用の創出につながっていくはずだ。
(小縣大輝)

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