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【TPP漂流~識者に聞く】(3)医療・保険「国際ジャーナリスト 堤未果氏」

  • 2017年1月25日 13時28分

<つつみ・みか>
 東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院で修士号取得。国連、NGO、米国野村証券を経て現職。日米を行き来し、各種メディアで発言、執筆・講演活動を続ける。「ルポ 貧困大国アメリカ」(3部作、岩波新書)、「沈みゆく大国アメリカ」(2部作、集英社新書)。最新刊に「政府はもう嘘をつけない」(2部作、角川新書)など著書多数。

薬価高騰「米韓」検証を
 トランプ氏の離脱宣言後もなぜ日本政府はTPP(環太平洋連携協定)にしがみつくのか。それはつまり国民に目を向けず、TPPの流れを止めたくない財界やグローバル企業、米国内の推進派と歩調を合わせているだけだ。

さらに譲歩拡大
 今後は確実に米との2国間交渉のFTA(自由貿易協定)になるだろう。その際日本がTPP批准済みなら、聖域全てを譲ったTPPの条件を交渉のスタート地点にされ、さらに譲歩内容が拡大する。米韓FTAで韓国が信じられないような不平等条約を結んだが、韓国同様、安全保障で足元を見られる日本も不利な交渉に投げ込まれることになる。

 トランプ大統領になって米が離脱したからと、TPP反対派が喜ぶのはまだ早い。2国間交渉ではTPPの時のように、「ISDS条項(外国企業が進出先の制度変更で損害を被った場合に、相手国を提訴できる)をやめてくれ」と言う豪州も、「酪農を守ろう」というニュージーランドもいない。これまでの日米関係をみると、米国と1対1で交渉して、果たして日本は強気でいられるかどうか火を見るよりも明らかだろう。交渉の達人であるトランプ氏は、米国の国益になるものは全て入れてくる。韓国の二の舞いを避けるなら、少なくともISDS条項だけは絶対に入れてはいけない。

 今こそ私たちは、米韓FTA後の韓国社会を徹底的に検証すべきだ。韓国は日本のように国民皆保険制度があるが、医療の場合、制度自体に触る条項はなくとも別項目に地雷が埋め込まれているケースが多い。韓国では政府が下げた薬価に不満があれば、企業が申し立てられる第三者機関ができた。これによって薬価を高く据え置く動きが出始めている。

規制緩和を注視
 一方日本でも、TPPに目を向けている間に医療制度の規制緩和が進んでいる。昨年4月に始まった患者申出療養制度では混合診療への幅が広がった。行政不服審査法改正で、厚労省が決めた薬価に不満がある場合、企業が申し立てできるようになった。今月からは高額療養費制度の見直しも始まった。五輪と小池劇場に目を奪われているすきに、国家戦略特区で医療の規制緩和が進むなど、日本国内の形が、水面下でじわじわと変えられていることを見落としてはならない。どれも、気づいた時には手遅れになる分野ばかりだ。

 TPPはたくさんあるカードの1枚に過ぎない。TPP、FTA、国家戦略特区、数の力での法改正。どれも国家主権を弱め、外資がビジネスをしやすい方向へ国を変えていく。

 国民健康保険については、国から各自治体へ財政の責任がさらに移譲されていく。負担増になると悲鳴が上がっているが、地域医療の裁量が増えることを逆手に取ることもできるのではないか。長野県佐久市など、限られた予算の中で予防医療による医療費削減を達成した成功例は少なくない。実は都市部より地方のほうが住民のつながりが濃く、予防医療が整備しやすいという強みがあるからだ。

 帯広は地元のことだけ考えればいい。米国内を優先するトランプ氏と一緒。グローバリゼーションの暴走に歯止めをかけ、民の主権を重視するのが今の世界の潮流だ。これからは小さい地域の出番。36万人の十勝地方がローカルネットワークで最先端になってほしい。(松村智裕)

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