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【TPP漂流~識者に聞く】(1)農業「東大大学院教授 鈴木宣弘氏」

  • 2017年1月23日 14時36分

<すずき・のぶひろ>
 1958年三重県生まれ。82年東大農学部卒業。農林水産省、九州大教授を経て2006年から東大大学院農学生命科学研究科教授。著書に「TPPと日本の国益」「悪夢の食卓-TPP批准・農協解体がもたらす未来」など。

さらなる市場開放警戒
 日本政府が「バラ色」になると言ったTPP(環太平洋連携協定)を、本家本元の米国が否定した。反対した人たちは勝利宣言をすべき。ただTPP水準から上乗せ譲歩する「TPP+α」をもくろむ動きが日米双方にあり、よかったとだけ言っている場合ではない。

農産物が標的に
 トランプ氏は、米国の企業と人々の所得を増やすために、日本など他の国に負担を求めている。軍事面でも貿易でもそう。農産物は格好の標的になる。米国の農業生産と雇用を増やし、日本に買わせる。

 そもそも軽自動車税の増税や自由診療の拡大、かんぽ生命のがん保険非参入など、非関税措置はTPPが発効しなくても既に自主的に譲っている。残るのは関税。TPPはリセットしても、似たような協定か、あるいは日米2国間のFTA(自由貿易協定)の形で持ち出され、開放させる動きが強まるだろう。

 では日本の対応はどうか。TPPが発効しないとほぼ確定しているのに、承認案を国会で強行採決した。これはTPP水準をスタートラインに、さらに国益を差し出すと国際公約するもの。トランプ氏に対して「TPP+α」の準備があると確約した。

 その姿勢は、大筋合意の動きがあるEUとの日欧EPA(経済連携協定)交渉も同じ。問題は酪農で、EUはソフト系チーズの完全撤廃を求めていて、そうなればチーズ向けの生乳は行き場を失う。安い豚肉も輸出されてくる。

 揺り戻しはあっても、今後は自由化で関税を下げていく流れを止めるのは難しい。農業所得はスイスは100%、フランスや英国は90%が補助金で成り立っている。過保護な水準でなくていいので、農産物価格が下がっても所得が確保でき、安心して将来計画が立てられるセーフティーネットが必要になる。そうした仕組みなしで規制緩和したら、北海道の農業はもたない。

アジアに目を
 貿易協定ではアジアの国がほとんど入った「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」の方が、日本にメリットが大きい。アジア諸国との交渉は柔軟性と互恵性があり、もうけるためにその国のルールを踏みにじるTPP型とは違う。多様な農業や地域が共存できるアジア型のルールを考えることができる。

 地域ですべきは、セーフティーネットなどを政策要望し、安い物が入ってきても十勝ブランドが選ばれる競争力を高めること。そのために十勝農業の頑張りや良さ、過保護に守られているのではない、という本当の情報を伝えていくこと。農業地帯の北海道でもTPPには賛成する声があった。自分たちの地域は自分たちで守る。「米チェン」のように地元サポーターになってもらう努力を十勝、北海道を挙げて進めることが必要だ。(安田義教)

 ◇ ◇

 米国のトランプ新大統領が環太平洋連携協定(TPP)の離脱を正式表明し、TPPは発効されずに漂流が確実になった。新たな貿易協定の可能性が指摘される中、今後の展望、日本や十勝が取るべき対応について、各分野の識者に聞いた。

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