HOME 特集 【TPP~戦えるのか十勝】(3)攻めの農業…輸出拡大
   | メール配信登録  twitter facebook |

特集

【TPP~戦えるのか十勝】(3)攻めの農業…輸出拡大

  • 2015年11月6日 14時30分

輸出増に向けた取り組みが進む和牛やナガイモだが、海外展開はあくまで国内の生産が基盤となる

増産限界、まず基盤固め
 「環太平洋連携協定(TPP)に不安がないと言ったらうそになるが、いつかくると思っていた。輸出は売り先をより多く確保することで、安定した収益を確保するのが狙い」

好調なナガイモ
◇現状が最大限

 180ヘクタールの大規模経営で、個人農家としてナガイモの輸出に取り組む本田農場(幕別町)の本田晴美さん(59)はこう語る。

 ナガイモは2014年に初めて台湾などに60トンを輸出。今年は150トンの輸出を予定している。本田さんは「TPP後は、市場の要望に的確に対応していく柔軟さやスピード感がより求められる」とみる。

 TPP大筋合意をめぐり、政府・与党は対策として「攻めの農業」「輸出拡大」を旗印のように掲げる。十勝では、国会でも取り上げられた十勝8JAで生産する「十勝川西長いも」など輸出の取り組みも既に盛んだ。

 同長いもは過去最高だった12年産で台湾や米国へ約9億円を輸出。ただ、同長いも全体の販売に占める輸出の割合は約15%。十勝全体の農業産出額と比べれば、わずか0・3%ほどと、輸出は一部にすぎない。

 販売を担当するJA帯広かわにしの常田馨青果部長は「ナガイモはもうこれ以上大きくは面積を広げられない。作れる条件の畑も限られており、同じ畑で続けて作れば病害が広がる」と課題も指摘する。畑作は作物を年ごとに変える輪作が欠かせず、ナガイモは連続して同じ畑で作ると、病害が多発する。

 薬剤で土壌微生物を殺して栽培する道外の地域もあるが、「そんなのは農業ではない」と十勝の生産者は土づくりを大切にする。

和牛処理に課題
◇産地間競争も

 「安倍晋三首相は『日本のおいしい和牛をどんどん海外に』と言うが、そんなに簡単じゃない」と話すのは、08年に道内で初めて米国に和牛を輸出したJA上士幌町の担当者だ。

 同JAはブランド化や、輸出経費の調査などを目的に輸出に挑戦。道内に米国の衛生基準を満たす食肉処理施設(と畜場)がなく、群馬県の施設に運んだ。

 しかし、遠い処理施設に持ち込む経費や牛の死亡リスク増大、為替の問題、地元で販売したいという意向もあり、輸出は1回限りで終わってしまった。

 現在、北海道畜産公社の道東事業所十勝工場(帯広市西24北2)は、米国も含め輸出可能となる施設を建設している。同JAの担当者は「経費も安くなり、牛の死亡リスクも大きく減る。輸出もしやすくなる」と歓迎する。ただ、すでに輸出実績がある他府県の銘柄和牛との厳しい競争も予想される。

 近年、輸出に頼ったことで、逆に生産者が危機に陥った海外の例もある。ウクライナ情勢でロシアが禁輸措置を取ったことで欧州の乳価が下落。中国の景気停滞でニュージーランドの乳価が急落し、同国がTPPで強硬に輸入拡大を求める要因ともなった。

 農林水産省によると、国内の和牛は15年の黒毛和種飼養頭数が161万2000頭で、5年前から13%減少するなど、離農などで基盤が揺らぐ。同JAの担当者は「何を輸出する気なのか。生産基盤が崩れているのにどう増産するのか」と疑問を抱く。輸出拡大に向けては国内の生産基盤の確立が必須となっている。(津田恭平、眞尾敦、佐藤いづみ)

観光特集(勝毎電子版)
十勝川白鳥大橋ライブカメラ
6~12時 12~18時
30日の十勝の天気
最高気温
27℃
最低気温
12℃
朝日デジタル

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み