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【TPP~戦えるのか十勝】(1)大規模化・効率化…畑作

  • 2015年11月4日 13時12分

 日本など12カ国が参加するTPP交渉が10月、大筋合意に達した。小麦や牛肉、乳製品などの輸入増加や、国産の価格下落などの影響が懸念される中、十勝農業は諸外国と戦えるのか、どう戦うのか、どうしたら生き残れるのか。現場取材を基に探った。(眞尾敦)

湿地など多少の悪条件をものともしない大型コンバインと鈴鹿さん。TPPとは関係なく効率化を既に進めてきた

安全性、消費者が決め手
 「(アメリカやオーストラリアの農業に)勝てるわけがない」「そもそも戦う気なんてない」「誰が戦わせようとしているのか」

 十勝で100ヘクタール以上の大規模畑作を経営する農業経営者は、こう口をそろえる。環太平洋連携協定(TPP)参加国の平均耕作面積は米国が1戸当たり約170ヘクタール、豪州約3000ヘクタールと、十勝平均の40ヘクタールを大きく上回る。

 米国平均とほぼ同じ170ヘクタールを経営する鈴鹿農園(芽室町)の鈴鹿誠社長(51)は、父の代は20ヘクタールほどの野菜農家だったが、「効率的に農業をやるには、規模拡大するしかない」と徐々に農地を広げた。

 「TPPだからどうしようとは思わない。これまでも頑張ってきた」。鈴鹿さんはそう自信を持つ。

小麦の関税削減
◇一抹の不安も

 町内農家10戸とグループをつくり、農薬や化学肥料を通常のほぼ半分に減らした小麦を計200ヘクタールで生産。消費者から求められる農産物を、農協を通さず、高付加価値で販売する。「消費者や販売先、農家、みんながトータルで良いと思ってもらえれば、TPPがどうということではなく、どんな産業でも生き残る」と見据える。

 ただ、「売り上げが倍になっても、利益は倍ではない。大規模化したから強いわけではない」と、TPPでの小麦の実質関税削減などに一抹の不安もある。

 同じ芽室で約100ヘクタールを経営する尾藤農産の尾藤光一社長(51)は「農業も『三方よし』(売り手よし、買い手よし、世間よし)でなければ。たくさんとれたはいいが、土壌を汚染し、環境を破壊していては世の中から見捨てられる」と、現在の農業を危惧する。

 飲食店経営や農畜産物の輸出にも関わる尾藤社長だが、講演や発表で最初に話すのは必ず「土づくり」。肥料の適切な低減など「土づくりこそ利益を生み出す」と経営を確立させた。

 TPPは「おそらく大筋合意するだろうと予想していた。最初からやるつもりならやると言って選挙に勝てばいい」と政府の姿勢には反発する。政府・与党が推し進める「攻めの農業」に対しては「攻めるのは当たり前だし、楽しい。しかし、他国の農業者と戦うつもりはない。戦わない攻めならあり得る」とする。

遺伝子組み換え
◇自戒を込める

 尾藤社長の所有する機械や設備では200ヘクタールまで規模拡大が可能だというが、現在の100ヘクタールでとどめる。「家族経営でできるだけ効率化したいと思ってきた。これ以上大きくしたら遺伝子組み換え作物を使うなど、社会的に認められないことに手を出したくなってしまう」と自分を戒める。

 しかし、安い農産物を求め、選ぶ自由を主張する消費者も多い。尾藤社長は「どんな世界を望むのか。安くて不安な食べ物を望むのか。農家でなく、消費者が決めること」と投げ返す。

新たに栽培にチャレンジしている亜麻の広大な畑にたたずむ小谷さん夫妻(7月)

「いい物届ける」プライド
 海外の農業展示会に毎年足を運び、技術を積極的に取り入れるコタニアグリ(更別村)の小谷広一社長(65)は「十勝の規模ではヨーロッパが参考になる」と話す。TPP参加国でないイギリス、フランス、ドイツの平均耕作面積は1戸50~100ヘクタールほどだ。

自国品の消費意識高いEU
 域内で農産物の関税がない欧州連合(EU)各国では、スーパーの商品に「自国品を消費しよう」と書かれ、消費者の食や農業に対する意識も高いという。

 「米豪や欧州でご飯を食べると決して日本より安くない。輸入が安いと思われているが、安いのは補助金など国家が輸出戦略を取っているからだ」とみる。
 小谷社長はもともとは帯広市内で家畜商を営み、牛を飼うために現在の農地を取得。1991年の牛肉輸入自由化を前に、畑作専業に切り替え約160ヘクタールを経営する。

選ばれるため新作物も挑戦
 戦後、肉食、パン食に変わってきた日本だが、小谷社長は輸入が多くを占めるパン用小麦も多く作り、消費者に届くよう試みる。「食料自給率が30%になっても選ばれる商品にしないと」と、亜麻や菜種など新作物にも次々と挑戦する。

 新たな作物の話をする小谷社長は生き生きとした笑顔でこう語る。「どんな企業でも変わっていくのは当たり前。(農家として)どうしても守らなければならないのは、いい物を届けるというプライドだけだ」

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