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【TPP十勝の試練】(3)「経営対策見えぬ財源 段階的に関税削減…畜産」

  • 2015年10月7日 15時03分

これからの牛肉生産に不安を抱く加納さん(折原徹也撮影)

 「大反対を押し切って大筋合意してしまった。この先どうなってしまうのだろうかという不安ばかり。これからの国内対策を早急に示してほしい」

 士幌町で肉牛約7500頭を飼育する西上加納農場の加納三司専務(61)は、環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意を受け、今後の肉牛生産に不安を募らせている。

 牛肉は現行38・5%の関税を協定発効時に27・5%、16年目以降は9%に削減する。米国産牛肉などは十勝で生産の多い乳用種雄の牛肉と競合するとされ、大きな影響が懸念される。

 関税が下がることで輸入牛肉の価格が下がる。安い牛肉が大量に入ってくると、国産牛肉の価格もつられて下がるとされている。国産牛肉価格の下落は、肥育農家の収入減につながる。

 生産コストが市場価格を上回った場合、その8割を補てんする補助金があるが、その財源は関税だ。関税の引き下げによって、関税収入は減少するが、政府はその代わりとなる財源確保について説明していない。加納さんは「補助金がなくなれば、経営が続けられないくらい影響は大きい」と補助金制度の継続を訴える。

 また、輸入が一定量を超えると関税を引き上げるセーフガード(緊急輸入制限)は16年目以降、4年間発動がなければ廃止される。加納さんは「際限なく外国産の牛肉が入ってくるということ」と危機感をあらわにする。

 消費者にとって、牛肉価格が安くなることはメリットではある。だが、現在は国産と外国産が競合していることで現在の価格が形成され、全て外国産に置き換わった場合は外国の言い値で価格が引き上げられると指摘する声もある。

 安全・安心という面でも、米国で肉牛の成長促進で投与しているホルモン剤が、乳がんなど人間のホルモン依存性がんの発症に影響を及ぼしている可能性があるとの研究もある。

 昨年度の十勝管内JA取扱高で畜産は1573億円と、56・2%を占める。芽室町で肉牛約4000頭を飼育する大野ファームの大野泰裕代表(51)は「地域の基幹産業をどう守るのかという問題もある」と指摘する。加納さんも「日本の食糧をどうするのかということを、政府は考えているのか」とけげんな表情を浮かべる。

 「輸入牛肉と国産牛肉との差別化を図り、消費者に選択してもらえるようにするしかない」。大野代表と加納さんは口をそろえた。

 輸出拡大に期待の声もある和牛に関して、サンエイ牧場(大樹町)で和牛を生産する十勝和牛振興協議会の鈴木英博会長(64)は「海外に輸出するチャンスではあるが、国内需要に加えて外国に輸出するだけの生産力が付いていくかは分からない」と話す。「和牛の生産は落ち込んでいる。生産者が先行きに不安を感じて離農が進み、さらに生産が落ち込んでいくことが一番心配」としている。

 豚肉に関しても、低価格帯の関税を1キロ当たり482円から発効時に125円、10年目以降50円とし、高価格帯の関税4・3%は10年目以降、撤廃される。約1500頭の豚を飼育する十勝養豚振興協議会の鈴木勝会長(70)=芽室町=は「これからは規模が大きく、設備投資もできるような力のある農家しか生き残れないだろう」とし、対策の強化を求めている。(津田恭平)

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