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【TPP十勝の試練】(2)「乳量減『負の連鎖』 乳製品に低関税枠」

  • 2015年10月6日 13時18分

「先行きが見えない」と、十勝の酪農家たちの苦悩は続く(幕別・妹尾牧場、塩原真撮影)

 「(農家の手取りに影響する)乳価も少しだが上がって、乳量にようやく回復の兆しが出てきた矢先、酪農業界にとっては、文字通り水を差す行為。大変ショックだ」。自らも清水町熊牛で酪農を営む、JA十勝清水町の串田雅樹組合長(51)は、環太平洋連携協定(TPP)交渉大筋合意の発表に憤りを隠せない。

 乳製品は、交渉が難航した項目の一つだったとされる。TPPが発動すれば、バターや脱脂粉乳が生乳換算で7万トン(6年目以降)を、「優遇輸入枠」の低関税で加盟国から受け入れなければならないことが明らかになっている。

 具体的な影響額は不明だが、輸入量が大幅に増えると、国内の市場価格に影響が出るのは必至。特に北海道は国内全体で半数ほどの生乳生産を占めるが、8割がバターやチーズなど加工用に回っており、その影響の大きさが懸念される。

 十勝に工場を持つ大手乳業メーカーも情報収集を急ぐ。帯広に工場を持つ明治(本社東京)は「海外輸出でのプラス、生乳生産基盤の弱体化におけるマイナスと両面を試算した後で今後の対応策を考えたい」(広報部広報グループ)とする。また、音更の十勝主管工場の主力がバターと脱脂粉乳製造という、よつ葉乳業(本社札幌)は「影響がないとはいえないが、これまでも国際競争を見据え、低コストで生産できる工場体制の確立を進めてきた。バターは多くのユーザーから高い評価をもらっているアイテムの一つ。今後も生産者の負託に応えられるよう、製造量の維持拡大を図っていく」(伊藤正志・総務広報グループ課長)としている。

 ただ、全国的にはバター不足が続いており、6月からは追加でバター1万トンを緊急輸入している。今回の新輸入枠を全量バターに換算しても5600トン程度であることから、関係者の間では「影響は限定的」との見方もある。

 幕別町新和で牛220頭を飼養する妹尾靖広さん(53)=JA幕別町酪農部会長=は、出産する牛を横目に「消費者の感覚からすると、バターがないのに輸入は駄目とはならない。私たちにできることは一生懸命、安心・安全な生乳を搾るだけ」と複雑な心境を語る。妻と父、スタッフ数人を抱え牛の育成と哺育にも励むが、「人の確保が年々厳しくなっている。TPPによって農家の収入が下がると、払う給与にも影響し、ますます人が来ない」と眉をひそめる。

 道内の生乳出荷戸数は減少し続け、十勝でも昨年度は約5%減少するが、生乳量は、酪農法人などの規模拡大で何とか維持している状況だ。全道一の生産生乳量(2014年度は1万8763トン)を誇るドリームヒル(上士幌)の小椋幸男社長(64)=十勝酪農法人会会長=は「TPPによるグローバル化は避けられないと思うが、国には酪農家の収入と展望を安定させる長期的な対応を求めたい」と注文を付けた。

 「酪農の規模拡大は軽く億単位になる」。関係者は口をそろえる。串田組合長は「TPPの全容が見えず、先行きが不透明な状況では、投資を控える農家や、離農もますます増えるだろう。そして乳量が減る-の悪循環。これまで通り、自助努力はしつつ、しっかりと政府に対策を求めていきたい」と力を込めた。
(佐藤いづみ、小縣大輝)

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