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【TPP交渉の波紋】(中)小売り・加工 農業疲弊 経済を直撃

  • 2015年8月3日 13時41分

TPP交渉で十勝農業にも影響がある小麦や乳製品の譲歩案が明らかになり、製パン・菓子業界も先行きを心配している(帯広市内の「菓子の家」で)

 「価格と一緒に、利用客の経済力まで下降線をたどったのでは元も子もない。(小売業も)大きな傷を負うことは間違いない」

 帯広市内のディスカウントストア「テキサス」本店の齋藤貴之店長(41)は、TPPが業界にもたらすものは「恩恵」ではなく「大打撃」とみる。今回の閣僚会合で明らかになった「小麦の実質関税45%削減」の譲歩案が現実となり、外国産小麦の関連製品が値下がりしても、増収増益にはつながりにくいからだ。

 懸念するのは、TPP導入後の地域の消費力低下だ。十勝経済は農業・食産業が中心で、運送や加工など裾野は広く、農家への打撃は地域経済全体の疲弊につながる。同店の利用客も農業関係者が多く、TPPによって農家の収入が落ちれば、売り上げ低下も心配される。

 さらに商品価格が下がったからといって、消費量が急伸するわけではない。特に主食には変化は少なく、「普段1枚パンを食べる人が安くなったからといって、2枚食べるようになるとは考えにくい」と齋藤店長。「関税撤廃は世界の流れ」と一定の理解を示しつつも、「TPPは厳しい」と強調する。

「デフレ再燃」か
 ある管内大手スーパーの幹部も「少子高齢化で、かつてのように安ければたくさん買う状況ではない。外国産が安くなれば国産の価格も引きずられて崩れ、(物価が下がり続ける)デフレと同じ状況が起きる」と懸念する。

 TPPによる小麦関税削減に対する懸念は加工業者も同じ。大樹町内でパン製造販売の「ぱん本舗『くーぷ』」を営む宇都宮晃店長(35)は、逆に農家減少などで国産小麦の原料価格が上昇することを心配する。「十勝産を使う私たちも、商品のサイズを小さくするか、値段を上げるかの選択を迫られる」と先の見えない将来を危惧する。

 宇都宮店長によると十勝産小麦の品質と、消費者が抱く親近感は年々向上している。「『十勝産小麦のパンはどれ?』との問い合わせや十勝産小麦を使った商品だから買ってくれる人が多い」という。そこに、もしTPPによる関税削減で外国産と国産の価格差が広がれば、せっかく親近感や安定感が高まってきた十勝産小麦とのバランスが崩れてしまうのではと心配している。

不作時の影響は
 また外国産への過度の依存が、経営の危機を招くことも心配する。「(TPP導入で)外国産小麦が増えた後に仕入れ価格がどれだけ変わるのか、外国で不作になったときにどうなるのかは予測がつかない」

 国内外の小麦やバターを使っている帯広市内の洋菓子店「菓子の家」の佐藤孝之代表(51)も同じ意見だ。TPPで外国産バターが入ると、国内生産縮小の流れも懸念されるが、「いざ外国から輸入されてこなくなったときに、消費者はもちろん、洋菓子店やパン店も困る」。

 思い出すのは2008、14年に起きたバター不足だ。「国内産のバターがなくなると、(国内産バターの味を重視している)クロワッサンなど作れないものが出てくる」という。

 TPPは一体誰のためのものなのか。大筋合意は見送られたが、佐藤代表は「生産者や消費者を守ってほしい」と願ってやまない。

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