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【どうなるTPP交渉大詰め~十勝の牛肉の行方は】(上)関税「9%」か

  • 2015年7月27日 13時35分

牛の世話をする鎌田さん。大詰めを迎えたTPP交渉に不安を感じながら日々を過ごす

肉牛産む酪農も壊す
 「(外国から)『言うことを聞かないと食べ物をあげないよ』と言われたらどうするのか。車やパソコンはなくても死なないが、食べ物はないと死んでしまう。一番尊い食べ物のことをよく考えないといけない」

 士幌町で肉牛1700頭を飼育する鎌田尚吾さん(44)=町肉牛振興会会長=は、こう訴える。

 環太平洋連携協定(TPP)で関税が下がれば、安い牛肉が食べられるという一部の声もある。これに対し鎌田さんは「国産と外国産の競合によって、現在の価格が形成されている。国産がなくなれば、競争相手がいなくなり、安い外国産の牛肉の価格は高くなる」とみる。

 政府のTPPの影響試算では、関税が撤廃された場合、乳用種雄の牛肉は「一部を除いて(輸入に)置き換わる」とされる。実際のTPP交渉では現行の4分の1の9%に引き下げると報道されており、影響は小さくないとみられる。鎌田さんは「9%」に対し、「(牛肉・豚肉や米などの関税を維持するとした)国会決議を守ったことにならない」と政府の交渉姿勢を疑問視する。

 国内の乳用種の肥育農家は、牛1頭当たりの収益が生産費を下回った場合、差額を補う補助金が国から支給されており、その財源は関税だ。鎌田さんは「補助金がなくなれば、牛を出荷すればするほど赤字。1年補助金が受け取れなければ離農する農家も出てくる」と危機感を募らせる。

 鎌田さんのような肥育農家が育てる雄牛は、酪農家で生まれる。副産物として必ず産出される雄が肉牛として買い取られることで、酪農家の収入を支える側面もある。

 上士幌町の酪農法人「サンクローバー」(船倉重信社長)では、近年の赤身肉需要の高まりもあり、ホルスタイン雄など子牛の売却価格は上昇中。船倉社長(69)は「酪農家にとって重要な副収入。仮にTPPの影響で売値がぐっと下がれば、経営が成り立たなくなるだろう」と懸念する。

 サンエイ牧場(大樹町)で和牛を生産する十勝和牛振興協議会の鈴木英博会長(64)は、関税が引き下げられ「安い輸入が増えれば、和牛も引きずられて値段が下がる」と心配する。

 同牧場は酪農と和牛が経営主体で、乳牛に受精卵移植して和牛を産ませている。十勝ではこうした方法で酪農と肉牛生産が支え合っており、鈴木さんは「TPPでバランスが壊れかねない」と話す。

 和牛は全国的に高齢化などで繁殖農家が減少し、子牛も不足。鈴木さんは「十勝ではなんとか減らさずに生産しているが、TPPへの不安で若い人が農家に入ってきてくれなければ今後は分からない」とし、地元選出代議士や政府に「重要5項目を守って」と切実に訴えた。(津田恭平、小縣大輝、眞尾敦)



 環太平洋連携協定(TPP)が、28~31日に米国ハワイで開かれる閣僚会合で大詰めを迎える。農産物をめぐっては、牛肉の関税を現行の38・5%から9%台に引き下げるとの情報もある。十勝の農家では、輸入と最も競合する乳用雄肥育が約100戸、和牛が約500戸あり、酪農家約1300戸と密接に関係した生産体系を築いている。生産と消費の両面から、最終局面を迎えたTPPへの思いを聞いた。

<TPP>
 関税や物流、サービスなど多角的な経済自由化を目指す協定で、アメリカ、オーストラリアなど12カ国が交渉に参加。米国で交渉を加速させる大統領貿易促進権限(TPA)法が成立したことで、28~31日の閣僚会合で大筋合意する可能性がある。日本では衆参両院が2013年、交渉から農産物の重要5項目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を除外または再協議とするよう求める決議をしている。

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