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【TPP十勝の新戦略~貿易自由化の流れの中で】(5)景観と観光

  • 2014年7月29日 14時22分

「畑ガイド」も務める井口社長(左)の案内でジャガイモ畑を回る観光客

田園は資源 “商品”にも
 2児の母親でもある「いただきますカンパニー」(帯広)の井口芙美子代表は、会社を立ち上げる1年前の2011年、主宰する育児サークルが企画した農業体験ツアーの下見で入った広大な小麦畑に大きな衝撃を受けた。

 延々と延びる防除畝がそこにあった。「『畑って入れるんだ、歩けるんだ』と。畝が私には道に見え、イギリスのフットパスが頭に浮かんだ。『この景観は良い意味で“商品”になる』と感動した」

◇今年度は千人
 同社は農業と消費者をつなぐユニークな事業を展開する。独自に養成した「畑ガイド」と一緒に歩く「農場ピクニック」や、畑で収穫した素材を使った料理をその畑内で食べる「畑カフェ」など。井口代表自身の体験が、こうした事業を始める原点になった。

 こだわりは「農業のありのままを見てもらう」こと。盛ったり、飾ったりしない。そして農業者には負担をかけない。農場ピクニックや団体ツアーなどの説明役は畑ガイドが担う。靴を貸し出すなど防疫面にも徹底的に気を使う。

 こうした姿勢は「協力農家が約100軒」(井口代表)という実績にも表れる。一度は協力を断ったという芽室の畑作農家、坂東俊徳さん(31)も今は「単に観光だけではない。農業を楽しく知ってもらう機会をつくってくれている」と信頼を寄せる。

 スタートした2012年度の畑ツアーの参加者は約130人、翌年度約150人、今年度は道外客にも目を向け、旅行会社などへの売り込み強化で1000人の利用を見込んでいる。井口代表は「将来的には3000人まで伸ばしたい」と意気込む。

◇ヒマワリ畑に
 十勝川温泉観光協会(音更)は収穫が終わった広大な小麦畑を、ヒマワリ畑に“変身”させる。観光客に景観を楽しんでもらう狙いで、協力農家には種を一部助成(上限あり)している。3年前からは町が同協会に事業費を全額補助する。同協会は「日本一の小麦生産地だからこそできる取り組み」と胸を張る。

 一方、昨年9月、芽室新嵐山の展望台に期間限定で展開された「天空カフェ」は、8日間で「予想の倍以上」の延べ1600人が足を運び、町民有志で組織する実行委員会を驚かせた。芽室町は2年前の都市計画マスタープランの見直しで、まちづくりのキーワードを「景観」とした。「田園を見下ろし、地場食材を使った料理を食するぜいたくさが町内外の人から支持された」と実行委。今年も9月の開催が決まっている。

 同実行委にキッチンカーなどの設備やノウハウを提供したのが後藤健市さん(帯広)=プロットアジアアンドパシフィック会長=だ。12年も前に友人らと畑で「フィールドカフェ」を実験的に展開するなど、十勝の農村景観の価値にいち早く目をつけていた。

◇海外も可能性
 後藤さんは「TPP(環太平洋連携協定)に関係なく、農業も確実にグローバル化が求められている」とした上で、「景観は地域資源をグローバルな視点で観光などに生かせる力を持っている。パッチワーク状の広大な畑も、海外などに十分売り込んでいける素材」と強調する。

 井口代表は、TPPによって十勝の農業、農村風景が変わってしまうことを危惧する。「十勝の農業景観はいつでもあるものと簡単に考えてしまいがちがだが、自然環境など条件がそろってこそ成立する“奇跡の逸品”。壊すのは簡単だけど、一度やめたものは簡単には取り戻せない」と力を込めた。(佐藤いづみ)

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