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【TPP十勝の新戦略~貿易自由化の流れの中で】(2)小麦生産・加工

  • 2014年7月24日 13時42分

アグリシステムが整備した石臼式の小麦製粉設備。現在、石臼は2台に増やして需要に対応している

地粉で消費地 より近く
 「照葉樹林帯のアジアでは、もちもちした食感が好まれる。製パン性の向上した十勝・道産の小麦粉はアジアの一大ブランドになる可能性がある」(アグリシステム=芽室=の伊藤英信社長)。「アジアなど照葉樹林帯の文化圏では、日本の餅が売れている。もちもち感がある十勝・道産の小麦粉は売れるチャンス」(山本忠信商店=音更=の山本英明社長)

◇もちもち勝機
 地元に小麦製粉工場を擁する両社の社長は、異口同音に十勝・道産の小麦粉の将来性の高さを強調した。

 両社は、それぞれ独自に事業展開する中で、十勝に製粉工場を整備。決して連携しているわけではないが、2人が見据える視線の先は同じだ。貿易自由化に歯止めがかからない一方、十勝の小麦生産・加工が目指すべき方向性が見え始めている。

 十勝には5年前まで、一定規模以上の小麦製粉工場がなかった。生産した小麦は管外の製粉工場へ運ばれそのまま流通網へ。「作った農家でも自分の小麦粉を使うことはもちろん、見ることさえない」とやゆされ続けた。農業・加工・行政など各関係者の間では、地元・十勝で小麦を製粉する「地粉」の実現が悲願だった。

◇質と量両面で
 帯広市や経済界の間では、小麦製粉工場誘致に向けた動きもあったが、結果的にアグリシステムが2008年、石臼式の製粉設備を持つ工場の整備に着手し、翌09年には稼働を開始。石臼設備では道内最大級となり、これまで着実に十勝産小麦の製粉量を増やしている。

 同社に続く形でさらに翌年の10年、雑穀卸の山本忠信商店が管内初となるロール式の製粉設備を持つ工場の整備計画を打ち出し、11年に完成させた。石臼式はミネラルの多い小麦粉を生産でき、一方のロール式は生産効率の高さがそれぞれの特徴。十勝はこの5年で、量と品質の両面からアプローチできる製粉工場を手に入れた格好だ。

 両社の製粉工場は、生産から加工、流通、消費に至る履歴管理(トレーサビリティー)も可能で、生産と消費の間の垣根を低くした。さらに両社は、小麦・小麦粉に付加価値を高めるための新たな取り組みを始めた。

◇新パン全国へ
 山本忠信商店は昨年、十勝産・道産の物産輸出に向け、音更町に輸出代行会社を、シンガポールに現地法人をそれぞれ設立。扱う商品は小麦粉だけではないが、十勝とアジアを結ぶ輸出の枠組みづくりに乗り出した意義は大きい。

 山本社長は「消費者に生産の状況などを伝えて安全・安心を確かめてもらうだけでなく、生産者にとっては消費者の声が農業の誇りになる」とした上で、「今後、十勝で少なくとも1次加工までを手掛けて農産物の付加価値をさらに高め、国内、アジア・世界の品質が分かる層に訴えることが必要」と語る。

 アグリシステムは今年、収穫されたばかりの小麦で作ったパンを、全国のパン店で一斉に「とかち小麦ヌーヴォー(新小麦)」として売り出す取り組みを始める。全国トップクラスのパン職人を通じて、産地と消費地をつなぐ試みだ。

 伊藤社長は「アジアでは既に北海道産がブランド視され憧れの的になっている。次のブランド化のキーワードは健康」とした上で、「生産者も低コスト・高品質化へと変わらなければいけない。生産者と消費者が近づいていく。そこに農業の未来がある」と力を込めた。(井上朋一)

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