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【TPP十勝の新戦略~貿易自由化の流れの中で】(1)農村ホームステイ

  • 2014年7月23日 13時28分

 環太平洋連携協定(TPP)の交渉に日本が参加してから23日で1年。この間、同交渉の進展をはじめ、日本とオーストラリア間の経済連携協定(EPA)の調印、その他の国とのEPA、自由貿易協定(FTA)など、貿易自由化の流れが止まらない。経済活動を重視する現在の日本で、どうすればTPPなどで農業・農村を守る政策や活動に理解が得られるのか、十勝の新たな取り組みから探った。


奈良県から農村ホームステイに訪れた高校生。十勝の農業、農家の暮らし体験が貴重な思い出となる(6月、芽室町で、中央が黒田さん)

絆育み 農業の応援団に
 「農業が文化の根源になってきたこの国で、農業が当たり前として大事だと理解されていない今、環太平洋連携協定(TPP)のような方向に向かってしまったら壊れてしまうものがたくさんある」。農村ホームステイを実施するNPO「食の絆を育む会」(浦幌町)の近江正隆理事長(43)は、こう危惧する。

 農村ホームステイは都会の高校生が修学旅行で十勝の農家に宿泊し、農村の生活を体験する。

 東京出身の近江さんは以前、「農村は自分たちでやりくりしてくれ。都会に甘えるな」と思っていたという。それが北海道に移住し、酪農や漁業で働くうち、思いが変わった。「東京が十勝を支えているのも事実だが、食料という命の糧を考えたとき、東京を支えているのは十勝だ」

◇都会を支える
 その思いから近江さんが、農家と始めたホームステイは今年で6年目。受け入れ農家は500戸を超え、今年は過去最高の約3000人を受け入れる。

 現在の課題は受け入れ先の広がり。近江さんは「受け入れは大変な面はあるが、食や農が大切だとか、何も難しいことは言わなくていい。子供たちに普通に接してほしい。まずは家族のようなつながりが大事」と強調する。

 短時間の農業体験とは違い、生徒たちは食事も一緒に作り、生活をともにする。受け入れ農家と別れる閉村式では、毎回涙で別れを惜しむ光景が見られるほど。

 1泊の生活体験を重視する理由を近江さんは「昔なら農業者といえば思い浮かぶ顔が身近にいたが、今はそうではない。あの人、あの営みと、イメージを思い浮かべられることが入り口。都市と農村の絆は時間をかけて失われてきたので、時間をかけて築いていかないと」と説明する。

◇教員も対象に
 この活動をさらに広げているのが、芽室町の畑作農家で全国農協青年組織協議会(JA全青協)会長の黒田栄継さん(38)だ。自身も教員免許を持つ黒田さんは、道農協青年部協議会の会長だった昨年、教員を対象とした農村ホームステイを始めた。黒田さんは「食育が大事と言われても、先生も食育を教えられる課程を受けていない。農家だけでは限界もあり、教えるプロである先生の力を借りたい」と話す。

 JA全青協では昨年、農村ホームステイのような全国の活動事例をまとめ、普及を図る食農教育部会を設置。黒田さんは「農家はまずは生産が大事なのはもちろんだが、農業関係者が一体となってこうした活動をやらないと。田舎は日本にとって必要ないんだと思われてしまう」と訴える。

◇1泊で変わる
 北海道大学の太田原高昭名誉教授(農業経済学)は農村ホームステイについて「たった1泊で、子供たちは変わる。家族でご飯を食べることさえ当たり前でない家庭もある中、都会を救うかもしれない」と指摘する。その上で「国産に親しみ、価値を感じる消費者がどれだけいるかが、日本の農業を守れるかのキーポイント。ホームステイを経験した人はきっと農業の応援団になってくれる。この活動を先頭に立ってできるのが十勝だ」と、活動に期待を寄せている。(眞尾敦)

<農村ホームステイ>
 管内12の生産者団体でつくるNPO法人「食の絆を育む会」が実施。受け入れ人数の推移は初実施の2010年が720人、11年は2081人、12年は1400人。13年は15市町村で1314人が宿泊した。最近は体験をその後につなげるため、学校に出向いての事後学習にも力を入れている。

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