HOME 特集 【十勝産の価値~TPP重要5項目を考える】(5)牛肉
   | メール配信登録  twitter facebook |

特集

【十勝産の価値~TPP重要5項目を考える】(5)牛肉

  • 2013年12月9日 13時37分

鎌田さんの牧場で餌を食べる子牛たち。TPP参加で、ホルスタインのほとんどは外国産に置き換わるとされる

評価高い品質…地産地消に意義
 「牛屋に死ねと言っているようなものだ」-。日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加し、牛肉の関税38・5%が撤廃された場合、乳用種(ホルスタイン)のほとんどが外国産牛肉に置き換わる-。こう想定する一方で、TPP交渉の見通しを示さない政府の姿勢に、士幌町肉牛振興会会長の鎌田尚吾さんは憤りをあらわにする。

 同会は、「しほろ牛肉」のPRとして、牛肉祭りを企画したり、地域の小学生にしほろ牛の生産過程などを授業で教えたりしている。鎌田さんは「自分たちが作っているからこそ説明できる」と地元で生産することの意義を強調する。国産牛肉の消滅は地産地消にも影響し、ひいては生産者と消費者をつなぐ「顔の見える農業」にも水を差す。

愛知でも人気に
 また、清水町の「十勝若牛」は全国各地の消費者に届いている。愛知県の丸忠は、経営する回転ずし店で十勝若牛のローストビーフ握りを提供。肉質が柔らかいことなどから人気メニューとなっている。同社の長野和弘営業部長は「外国産になったら肉質も全然違ってくる。国産は衛生管理もしっかりしている」と、十勝若牛がなくなることへの懸念を口にする。

 政府の試算によると、国産牛肉生産量の約75%に当たる国産牛肉(ホルスタインのほぼ全量と和牛の約半分)のうち、9割が外国産牛肉に置き換わる。外国産牛肉の価格は国産の3分の1程度となり、同時に関税約700億円も喪失する。

 肉牛農家に対する補助金は関税で賄われているものもある。士幌町の鎌田さんは「補助金がゼロになるとすぐに(経営が)立ち行かなくなる」と危機感を募らせる。ただ、補助金の支給を継続するには、外貨で得ていた関税分を国内で賄う必要があり、それは国民負担が増えることを意味する。関係者の思いは複雑だ。

 TPP参加による影響は肉牛農家だけにとどまらない。酪農家に生まれたホルスタインの雄は市場に売り出され、肉牛農家が買い取る。買い手である肉牛農家が仮にいなくなった場合、酪農家の雄の子牛は行き先がなくなる。子牛の個体価格は現在約3万円。酪農経営への影響は決して少なくない。

搾乳農家へ影響
 JA上士幌町酪農振興会会長の大西仁志さんの牧場では、年間約50頭の雄牛が生まれる。大西さんは「売る場所がなくなれば、収入がなくなるし、残った雄牛はどうすればいいのか」と不安を隠さない。その上で、「肉牛農家がなくなれば、連動して搾乳農家も姿を消すことは間違いない」と言い切る。

 自国での食料生産の縮小によって、他国との外交交渉が不利になる可能性も指摘される。「『言うことを聞かないと食料をあげないよ』となったらどうするのか。命に関わる農業の弱体化は絶対にあってはならない」(士幌の鎌田さん)。「十勝の価値」を知る地元関係者の願いは切実だ。(津田恭平)

観光特集(勝毎電子版)
十勝川白鳥大橋ライブカメラ
6~12時 12~18時
21日の十勝の天気
最高気温
23℃
最低気温
14℃
朝日デジタル

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み