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【十勝産の価値~TPP重要5項目を考える】(2)小麦

  • 2013年12月5日 13時20分

十勝を含む道産小麦を使った商品開発が活発化(敷島製パン犬山工場で)。こうした動きもTPPによってブレーキがかかることが心配される

日本の食の中心…国産へ続く努力
 「国産のパン用小麦がこれからというところなのに、環太平洋連携協定(TPP)で立ち消えになる可能性はある。パン用小麦の自給率は本当に3%でいいのか」。国内最大の小麦産地音更町で小麦約50ヘクタールを栽培する農家三浦尚史さん(43)は、危機感を強める。

 2011年、総務省の家計調査で初めてパンの消費額が米を上回り、実質日本の主食となりつつあるパン。だが、そのパン用の小麦の自給率はわずか3%しかなく、小麦全体でも11%にすぎない。

 十勝で一般農家での栽培が始まって3年目に入った超強力新品種「ゆめちから」。パン用途に向く小麦の生産が道内で広がる中、TPPはこうした産地の努力を無にしてしまう可能性がある。

 小麦「粉」の関税は1キログラム当たり106円。1トン当たりで換算すれば10万6000円にもなる。輸入小麦の政府売り渡し価格が同5万7260円であることを考えると、実質小麦粉の状態で輸入するのは難しい。

ビジョン見えず
 現在、小麦は製粉前の段階で政府が一元的に輸入し、農家支援の財源を確保する「マークアップ」分の金額を上乗せして製粉会社に販売している。小麦粉状態で安く輸入が可能になれば、この「マークアップ」の確保が難しくなる。

 11年に自社製粉工場を建設した山本忠信商店(音更町)の山本マサヒコ専務は「もし小麦粉の関税を単純に撤廃して、(現在の支援に代わる)他の支援が何もなかったら生産現場は小麦を作れなくなる」と指摘する。その上で、政府・自民党が重要5項目の関税撤廃時の影響を検証したことについて、「関税撤廃以外の条件の部分が見えないと何とも言いようがない。問題はこの国に農業は本当に必要なのか、いらないのか、どんな国の形を目指すのかというビジョンが見えないことだ」と憤る。

 同社の自社製粉工場や、十勝産小麦100%を実現したパン店満寿屋商店(帯広市)など、地元の小麦を地元で消費しようという取り組みも緒に就いたばかり。十勝の主力のうどん用でも、オーストラリア産に負けない新品種「きたほなみ」に全量転換して4年目を迎え、大手うどんチェーンでも使われるなど品種改良は実を結びつつある。

 大規模生産の米国、カナダ、豪州にはかなわないまでも、生産者や製粉会社はコスト低減や栽培技術の向上、普及活動に力を入れている。

大手パンも前面に
 大手製パン会社でも小麦自給率向上への取り組みが本格化。国内第2位の敷島製パン(愛知県)は、ゆめちからを前面に打ち出した商品を展開中だ。TPPについて同社広報は「会社として賛成、反対を言う立場ではない。ゆめちからの商品開発はTPPとは別次元」とするが、一方で国産小麦が生産できない状況になることには「困る」と本音ものぞく。

 日本の食の中心を担いつつある小麦。そのほとんどを海外に依存する状態になっていいのか。根本的な議論を欠いたまま関税協議は大詰めを迎えようとしている。(眞尾敦)

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