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【十勝産の価値~TPP重要5項目を考える】(1)砂糖

  • 2013年12月4日 13時54分

 TPPの年内妥結に向けた閣僚会合が7~10日、シンガポールで開かれる。最も難航している関税協議では、日本がこれまでの貿易協定で関税撤廃したことがない重要5項目586品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物など=砂糖やでんぷん)と、その他の重要248品目(小豆など)を合わせた「聖域」(834品目)を政府・自民党が死守できるかが焦点だ。十勝で生産量が多い小麦、牛肉、乳製品、砂糖、でんぷん、小豆を通じて、生産や加工、消費の現場で、守るべき重要項目の価値を確かめた。


管内各地からビートが運び込まれる日本甜菜製糖芽室製糖所。TPP締結でトラック業界などにも大きな影響が出る恐れがある(10月17日、塩原真撮影)

産業けん引…生産から菓子店まで
 「砂糖は外国のものと比べて品質や見た目に大きな差がない。仮に関税が撤廃されれば、国産が全て外国産に置き換わる可能性も考えられる。そうなると、ビートの生産農家は廃業に追い込まれ、製糖工場の存続は危ぶまれるだろう」。十勝管内の製糖業3社のうち、グラニュー糖を中心に年間14万~16万トンの砂糖を生産する最大級の製糖施設、日本甜菜製糖芽室製糖所(芽室)。秋岡廣一次長は、関税が撤廃された場合の状況の深刻さを強調する。

雇用8000人
 328%の高い関税率で守られている砂糖。原料となるビートの栽培、生産において十勝は国内トップの地域だけに、単価の安い外国産が市場を席巻したとき、十勝の輪作の要に位置付けられるビートの壊滅が懸念される。十勝総合振興局は環太平洋連携協定(TPP)により、十勝におけるビートの生産額が261億円減、関連産業で385億円減、地域経済全体で425億円減となる他、雇用面で8000人に影響が及ぶと試算している。

 製糖工場で働く従業員に限らず、運送業者への影響も大きい。同製糖所では、最盛期だと1日に延べ約2000台のトラックが出入りし、約2万トンのビートを輸送している。十勝地区トラック協会の沢本輝之会長は「農業と運送業は車の両輪のようなもの。TPPによってビート畑が姿を消せば、経営は成り立たなくなる」と不安視する。

 道産、十勝産を主原料とした菓子の製造販売を手掛ける柳月(音更)にとっても、TPPは企業理念を揺るがす問題だ。重要5農産物の中で砂糖については、同社の売り上げの4割を占める銘菓「三方六」を含む約300品種の菓子に使用され、菓子王国・十勝の味を支えている。また、十勝産は安全で安心という意識から商品を選ぶ購入客が多いことからも、安易に外国産に置き換えるわけにはいかない。

こだわってこそ
 同社の田村昇社長は「地場の原材料にこだわってこそ、大手との差別化が図れる。今後も十勝で生産される砂糖を使い続け、北海道ブランドを高めていくことがわれわれ菓子店の使命」と強固な姿勢を貫く。

 農林水産省が公表した2012年度の食料需給表によると、砂糖は国民1人1日当たりの食事から得られるカロリーの約8%を占めるなど、日本人の食生活に欠かせない存在。帯広畜産大学地域連携推進センター産官学連携コーディネーターとして10年間勤務し、食の安全・安心に取り組んできた獣医学博士の田中一郎氏(70)=帯広市=は「脳のエネルギー源になるなど、砂糖の働きは大きい」と話す。食の安全保障も視野に入れ、「国は緊急時に備えて最低限必要な量を確保すべきだ」と訴える。

 十勝の産業構造の一端を担うビート。砂糖の行く末を占うTPP交渉はいまだ不透明なままで、地域社会への影響や食の未来への不安はいつ消えるのか-。関係者の熱い視線が注がれている。(小縣大輝)

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