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【年間キャンペーン とかち 新・働く考】壁を越えて~女性たちと就業環境(4)

  • 2013年11月27日 15時02分

職場実習に励む栗木さん。「エコチルはまさに子育て中の親が読者層。その目線で頑張っていきたい」と張り切っている

中小企業新戦力発掘プロジェクト
職場実習で復帰後押し

 小学校に配布される子供向け環境教育情報紙「エコチル」を発行する、札幌市内のプロモーション事業会社「アドバコム」の編集部。スタッフの1人、栗木美鈴さん(37)は出産・育児による約5年間のブランクを経て、6月から「職場実習」としてここで働いている。

取材や編集担当
 実習生として栗木さんを同社に派遣しているのは、中小企業庁の今年度の新事業「中小企業新戦力発掘プロジェクト」。結婚・出産などで退職し、再就職を望む女性に、登録企業で最大6カ月間の実習を行ってもらい、職場復帰を後押しする支援制度だ。

 神奈川県出身の栗木さんは大学卒業後、東京都内の出版社で10年間、雑誌や書籍の編集に携わった。出産で退職し、2年前に夫の実家がある札幌へ。「社会に出ている自分でありたい」と、3歳の一人娘が幼稚園に入ったのを機に今春、再就職を考えた。

 元の編集の仕事を望むもハローワークでは「札幌では難しい」と言われ、子育てで時間の融通がつかないことも「壁」となった。そんなとき、出合ったのがこのプロジェクトだった。

 同編集部では「円山動物園だより」などの取材や編集を担当。週5日の勤務で午後3時以降は母親に戻る忙しい毎日だが、「経験をフルに生かせる仕事。限られた時間で厳しいが、集中し、時間意識を持てるようになった」と充実した日々を送る。仕事の勘も取り戻し、実習終了後は即戦力として同社に正式雇用される予定だ。

 「中小企業は人材採用に苦戦している。多様な社員の活用は企業の課題でもある」。同庁の委託でこのプロジェクトを行う「キャリアバンク」(札幌市)の三上力さんは、女性活用の企業側のメリットを語る。同社の場合、今春から道内130社で計143人(十勝管内は1社登録のみ、10月末現在)が実習に臨み、既に2人が就職を果たした。

相互理解が進む
 プロジェクト最大の特徴は、実習期間に企業、女性の相互理解が進むこと。子育て中の女性の雇用に二の足を踏む企業もあるが、「『いい人で頑張ってくれるなら、時間などの融通は利かせたい』という中小企業は多い」と三上さん。アドバコムの美濃孝二管理部長も「一般募集では、人となりまではなかなか分からない」と話す。

 課題もある。キャリアバンクの同プロジェクト責任者・中田華代さんは「当初は正社員雇用を目的に始めたが、道内ではパートや短期雇用で働きたい人が圧倒的に多い」。これに対し企業側にはフルタイムを求める需要もあり、両者のニーズにずれがある。

 中田さんは短時間・交代制などの「働き方」も挙げ、「『女性の働き方』が浸透していない。登録企業の中には、実習を受け入れたことで『新しい雇用形態を提案してほしい』というところもある」と企業側の意識変化に期待する。

スポーツクラブで働く高野さん(左)。「仕事は楽しい。子供と過ごす時間も大切と心掛けるようになった」と話す

保育所など環境が課題
 働きたい女性と人材が欲しい企業を結ぶ同プロジェクトが効果的な一方で、子育て女性の職場復帰には社会の壁も立ちはだかる。

 「仕事はまだ先かと一度は諦めた」。プロジェクトを活用し、ソプラティコ(本社小樽市)が運営する札幌市内のスポーツクラブで実習中の高野ゆかりさん(28)は振り返る。再就職を志し、1歳すぎの子供を認可保育所にと区役所を訪ねたが、答えは「待ってもらっても無理」だった。

 美容の専門学校を卒業後、東京のエステ会社で4年間、正社員としてカウンセリング業務などを経験し、結婚退職。3月に故郷の札幌に戻った。子供はまだ小さいが、「働くことで自分自身の社会を広げたい」と思った。

 その後、運良く近くに認可外保育所がオープンし、実習に参加できた。接客の経験を生かせる仕事に、充実感を感じる一方、子供の急な病気などもあり、「親や周囲の助けがないと(女性の再就職は)難しい」と実感する。

 都市部を中心に保育所の待機児童問題は深刻で、中田さんは「保育所が見つからずに実習を辞退した人は何人もいる」と話す。豊富な経験や知識を持つ女性の「発掘」には、企業の理解だけでなく、働き続けられる社会環境の整備がまだ足りないのが実態だ。(小林祐己)

<中小企業新戦力発掘プロジェクト>

 結婚や育児で職場を離れた女性を「新戦力」と位置付け、企業側に橋渡しする。ブランクの不安を実習で解消、企業には女性活用に理解を深めてもらう。道内では複数の事業受託先がある。実習生には期間中、国から技能習得支援助成金(日額5000~7000円)が出る。企業側の費用負担はない。




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