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【TPPの先例は今 米韓FTA韓国リポート】(5)医療

2013年06月11日 15時19分

ソウル市内の病院内。営利病院の拡大による医療格差も心配されている

皆保険崩壊狙う米国
薬価糸口 格差に現実味


 「米国の一番の狙いは韓国の国民皆保険を壊滅させること」。米韓FTA(自由貿易協定)阻止国民運動本部の朱帝俊(ジュ・ジェジュン)政策委員(42)が危機感を募らせながら発した言葉は、同じく国民皆保険制度を取る日本にとっても衝撃的だ。

営利病院開設へ
 米韓FTAでは、国内3カ所の経済自由区域で“営利病院”の開設が米国側に認められた。そこでは病院経営者が自由に医療費を決めることができる。裏を返せばこのことは、保険適用外で莫大な費用を請求できることを意味する。

 現在、仁川経済自由地域には約600床の大病院が米国資本で建設中で、通常の医療費の6〜7倍の費用を求められる−。本気でそんな心配をする人が、地域住民の間に少なくないという。

 今後、営利病院が認められる経済自由区域がさらに増えていくことが予想される。朱さんは「所得の多い人は良い治療を受けることができ、逆に少ない人は十分な治療が受けられなくなる」と医療格差の問題を懸念する。

 これは環太平洋連携協定(TPP)に参加した場合、日本でも十分に想定されることだ。「病気になったら病院に行き、治療を受ける」。今まで当たり前だったことが決して当たり前ではなくなる未来がやってくる、その可能性は否定できない。

 また、米韓FTAでは、韓国国内の薬の価格(薬価)を米韓共同委員会で決めることになった。「自分の国の薬価すら自分で決められないとは」。朱さんは表情を曇らせる。

 韓国では基本的に医療費の6割を国が負担する。米国は薬価の引き上げで国の財政負担を重くし、健康保険制度の維持を不可能にする。そうすることで、米国の民間保険会社の市場拡大へとつなげたい考えだ。

「命も米の都合」
 2012年1月、韓国の郵便局の生命保険や年金保険の限度額を引き上げようとしたところ、「国営保険の加入限度を高めれば米国の民間保険会社の圧迫につながる」と米国から反発を受け、撤回した例もある。

 これらの事例に共通しているのは、国民の命や健康を守ることでさえ、「米国の都合に合わせるように」(朱さん)ということ。朱さんは警鐘を鳴らす。「米韓FTAで盛り込まれたことはTPPでも要求される。そうすると日本にも大きな影響が出るでしょう」

 ソウル市内の病院内。車いすに乗った患者や点滴を付けて歩く患者も目に入る。営利病院の拡大や国民皆保険の崩壊が起こると、患者たちはこれまで通りの治療を受けられないかもしれない。それは韓国に限った問題ではない。TPPに参加した場合の日本でも起こり得る現実である。
(おわり、津田恭平)

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