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【TPPの先例は今 米韓FTA韓国リポート】(2)果物・野菜

2013年06月07日 14時20分

米国産のオレンジがずらりと並ぶソウル市内のスーパーマーケット

輸入増え価格3割安
作物転換で国産共倒れ


 ソウル市内のスーパーマーケットの果物売り場。米国産のオレンジやチェリーが山のように積まれている。店員いわく、「以前は輸入品はこんなに並んでいなかった」。輸入果物の売り場は、国産のそれと同じくらいのスペースを占める。輸入物の急激な増加を肌で感じる瞬間だ。

消費も価格も減
 米国産果物の輸入増は、言うまでもなく米韓FTAの発効で関税が下がったことに起因する。オレンジは特定期間のみ関税が下がる季節関税が取り入れられ、3〜8月は関税が50%から30%に下がり、チェリーは24%の関税がゼロになった。約300の市民団体で構成する米韓FTA阻止国民運動本部によると、その結果、1年間でオレンジは33%、チェリーは78%輸入量が増えた。

 ソウルから200キロ離れた益山市にある益山園芸農協が運営する市場でも、米国産オレンジが前年比1.5倍の入荷量となり、値段は2〜3割下がった。これに引きずられ、国産のイチゴとトマトも15%ほど値下がりしたが、「どちらも全然売れない」と金峰鶴(キム・ポンハク)組合長(62)は落胆する。「農家からは悲鳴が上がっている」とし、輸入果物に対抗して値下がりが続くと、「小規模の農家はどんどん離農していくだろう」。金組合長が描く将来像は悲観的だ。

 所変わってソウル市内のスーパー。米国産オレンジの前で1人の男性買い物客が立ち止まった。すぐにオレンジを籠に入れた男性は「国産のデコポンを食べたいが、安いのでオレンジを買います」と話した。経済状況が悪化する中での消費者心理として、安い方に手が伸びてしまうのは理解できることだし、これは当然、日本でも起こり得る。

 「米国産果物が大幅に増え、韓国産の果物や果菜類に大きな影響を与えていることは、FTAの目に見えるはっきりとした結果」と話すのは、同国民運動本部の政策委員を務める朱帝俊(ジュ・ジェジュン)さん(42)。安価なオレンジやチェリーの消費が増えたことで韓国産ミニトマトやイチゴの消費が落ち、価格低迷につながっているという。

支援策逆に圧迫
 特に、オレンジとの代替性が高いデコポンに関して、デコポン農家は「勝負にならない」と、果樹・果菜栽培への切り替えも視野に入れている。そうすると今度は、果樹・果菜農家との競合が進み、ますます価格暴落を引き起こすことが心配される。

 また、被害農家支援のために創設した基金が不適切な用途に使用されているとの指摘もある。昨年、農村地域で大規模なトマト栽培を始める企業に対し、施設整備などで約500億ウォン(約45億円)の補助金を基金から繰り出した。当初はトマトの輸出を前提に投資したが、販路がなく、国内の流通にとどまっている。そのためトマトは供給量が増え、値崩れを起こしている。これでは被害農家を救うどころか、逆に一層苦しめているとしか言いようがなく、問題視されるのは当然だ。

 十勝でも輪作体系が崩れると、野菜への転換の可能性が指摘されており、野菜が過剰になると次は値崩れが起きる。ひいては競争力のない中小農家は廃業を余儀なくされる。FTAにさらされた韓国果物農家の悲哀は、明日の十勝農業の姿でもある。(津田恭平)

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