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【TPPの先例は今 米韓FTA韓国リポート】(1)畜産

2013年06月06日 14時25分

 環太平洋連携協定(TPP)交渉参加への日本の動きが加速する中、TPPの手本とされている米韓FTAの発効から1年が経過した。韓国国内の農業や自動車業界など現場の実態をリポートし、日本がTPPに参加した場合の影響について考える。
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牛舎の横で畜産業の将来を不安視する李さん(韓国益山市)

 「1年間で1万7000戸の畜産農家が廃業しました。私たちは政府に完全に見捨てられたのです」。ソウル市から約200キロ南に位置する益山市で約600頭の肉牛一貫生産農家を営む李根秀(リ・クンスウ)さん(59)は肩を落とす。

飼料高騰に続き
 韓国では2010年11月から翌年4月に発生した家畜の伝染病、口蹄(こうてい)疫からの立て直しを進める中、飼料価格が高騰した。米韓FTAの発効がこれに続き、たたみかけるように畜産農家の経営にダメージを与えている。

 米韓FTAでは米国産の輸入牛肉の関税を15年間で40%からゼロにすることを決めた。1年当たりの削減幅は2.7ポイントだが、李さんはFTAが発効してからの状況について、「米国産輸入牛肉が増えている」と憂い顔で話す。

 安価な輸入牛肉の増加により、国産価格への影響も出てきている。李さんによると、1年間で肥育牛の価格が1頭当たり、約600万ウォン(約54万円)から約500万ウォン(約45万円)へと2割ほど値下がりした。親牛が子牛の顔をなめる穏やかな光景を横目に、李さんの表情は曇りがちだ。「餌代などのコストは高くなっているのに、牛の値段は下がる。これではやっていられない」

肥育牛2割下落
 厳しい経営を迫られる中、廃業する農家も増えている。李さんは「昨年1年で、国内約13万戸のうち1割以上に当たる畜産農家が離農した」と指摘する。

 この割合を十勝に当てはめると、現在の肉用牛の飼育戸数737戸のうち96戸が廃業することになる。管内24農協で肉用牛飼育農家が一番多いのはJA十勝池田町の82戸だが、数字だけを見ると一つの農協に所属する全肉用牛飼育農家が完全に姿を消すというショッキングな現象だ。

補助1%分のみ
 韓国政府はFTAによって畜産部門への被害が出ることを想定し、FTA基金を創設した。肥育牛1頭当たり1万3000ウォン(約1170円)の補助金を出すことを提案したが、個体価格が100万ウォン(約9万円)の下落に対して1%程度とあまりの少なさに農家は猛反発。「ばかにしている」と憤り、農家全体で抗議している。

 米韓FTAの発効からまだ1年。今後さらに関税が下がり、安い輸入牛肉が増えてくる。「全く先が見えない」という李さんの個人的なつぶやきは、韓国畜産業の不透明な将来、ひいては十勝における畜産業の未来をも暗示している。
(津田恭平)

<米韓FTA>
 米韓自由貿易協定。2006年2月に交渉開始宣言し、07年4月に交渉妥結。12年3月に発効した。農業をはじめ、自動車、繊維、医療、金融、労働など項目は多岐にわたる。関税の撤廃や規制緩和などを盛り込み、貿易の自由化を図った。

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