HOME 特集 【TPP識者の視点】(4)日本福祉大学長 二木 立氏
   | メール配信登録  twitter facebook |

特集

【TPP識者の視点】(4)日本福祉大学長 二木 立氏

2013年05月16日 13時29分

<にき・りゅう>
 1947年生まれ。72年に東京医科歯科大医学部卒。代々木病院リハビリテーション科科長・病棟医療部長などを経て、85年に日本福祉大学教授。09年から同大副学長を務め、今年4月から現職。「保健・医療・福祉複合体」(医学書院)、「TPPと医療の産業化」(勁草書房)など著書多数。

医療 薬価引き上げ現実味
 まず、環太平洋連携協定(TPP)自体について私は反対だ。価格競争で太刀打ちできないアメリカやオーストラリアに、日本農業が壊滅的打撃を受けるし、医療の営利化が進む危険が強いことも理由だ。しかし、一部の医療関係者らが、TPPで国民皆保険の崩壊を懸念していること(私は、これを「地獄のシナリオ」と呼んでいるが)については、大きな疑問を感じている。

 医療に与えるTPPの影響は複眼的に考えることが必要。日本医療へのアメリカの要求内容を、通商代表部の報告書などを基に検証すると、次の3段階で要求してくることが予測できる。

全面解禁には疑問
 第1段階は、医薬品・医療機器の公定価格の撤廃・緩和。第2段階は「特区」に限定した混合医療と株式会社による病院経営の解禁であり、第3段階はその2つの全国レベルでの全面解禁だ。

 実現の可能性を考えると、第1段階が最も高い「今そこにある危機」だ。日本では新薬が承認されるとほぼ自動的に保険に収載されるため、巨大製薬企業には「世界で最良の市場」と言えるからだ。

 第2段階は長期的には否定できないものの可能性は低く、第3段階は非常に低いと判断している。第3段階は法改正が必要だが、国民の大多数が国民皆保険制度を支持している中では政治的に法改正は不可能だ。さらに、混合診療の全面解禁は総医療費の高騰を招き、抑制したい政府方針にも矛盾する。

所得格差が広がる
 仮に第1段階が実現したら新薬の薬価が引き上げられ、患者負担が増加する。低所得患者は服用を断念せざるを得なくなる可能性があり、そのような事態は所得水準の低い地方ほど起きやすいだろう。

 アメリカでは所得水準で受けられる医療が変わることが公平だが、日本では貧富の別なく医療を受けられることが公平と考える。その中で、TPP参加を想定するとアメリカは医療にも市場原理導入を要求してくると思われる。

 それは、国民皆保険の空洞化を招きかねない。私たちが本当に守らなければならないのは、「いつでも、どこでも、誰でも適切な医療を受けられる」という意味での国民皆保険であることを忘れてはいけない。(井上朋一)

観光特集(勝毎電子版)
十勝川白鳥大橋ライブカメラ
6~12時 12~18時
25日の十勝の天気
最高気温
25℃
最低気温
14℃
朝日デジタル

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み