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【年間キャンペーン とかち 新・働く考】特別編 復興のまちで(下)

2013年03月15日 14時46分

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畑と設備失った農業者
支援が希望に 態勢再構築


「観光客が来ず、地元の旅館も困っている。われわれが立ち上がることへの期待は大きい」と話す山中組合長

 ビニールハウスに入ると、イチゴの水耕栽培棚が工場のように整然と並んでいた。広さ約2000平方メートル。和田観光苺(いちご)組合の山中賢一郎組合長(67)は巨大な屋根を見上げ、「室内みたいな感じ。(放射能を心配する)子供連れのお客さんも、この姿を見ると安心してくれる」と話した。

恩返しを誓う
 相馬市和田地区に、昨年12月に完成した巨大ハウスは計3棟。総事業費2億4000万円は国が補助した。震災前2万人以上いた毎年末〜5月のイチゴ狩り来場者は昨年、約6000人に減ったが、今年は出足が良いと感じている。

 同地区にはイチゴ農家13戸のハウス100棟があったが、巨大津波で60棟が全壊。避難し、廃業する農家もあり、山中さんも一時は「この辺が引き時か」と思った。残った8戸で再開を決めたが、流されてきたノリ養殖施設や防風林の残骸はトラクターでも動かず、焦りばかりが募った。

 そんなとき、足を運んでくれたのが各地からのボランティアだった。絡まった網や竹をカッターナイフで一本一本切る姿に、力をもらった。原発事故の影響は深く、相馬に観光客が戻る日はまだ先だ。それでも「以前の姿に戻すことが、汗をかいてくれた人たちへの恩返しになる」と日々、心に誓っている。

復活したハウスで花を栽培する田中利明さんと妻のトモ子さん。柱には津波の記録が残る

 同じく支援の力で再起した人がいる。南飯渕地区で花や米を作る田中利明さん(62)はあの日、自宅から約5キロの防風林を超える煙のような白い波を見た。急いで逃げ、夕方に戻ると辺り一帯は海になっていた。

 花のハウスは全滅した。しかし、延べ450人のボランティアが手作業でがれきを取り除いてくれた。雑誌の企画で市価の倍の値段を付けたマーガレット3000鉢に、2万鉢の注文が来た。「倒産しなくて済む。これは頑張らねばと思った」と感謝している。

 津波をかぶった田んぼにも再開の動きがある。昨年、地域の6戸で合同会社「アグリフード飯渕」を設立。企業財団からトラクターなどの支援を受け、大豆を作る予定だ。「希望が湧いてきた。何とか生活手段を確保したい」という。

法人化に力
 同市では農地2700ヘクタールのうち、40%の1100ヘクタールが津波被害を受けた。機械や倉庫を失い、離農した人も多い。がれきの撤去や除塩とともに市が力を入れるのが法人化で、昨年、市内で初めて4農業法人が誕生した。吉野光一市産業部長は話す。「生産から加工までの6次化で、若い人も働ける新しい農業を興したい」

雇用と農地守る法人化
 和田観光苺組合も新法人の1つだ。津波被害で離農した人も社員として雇用する。苗作りも含めて年間の雇用者は7人。今は1棟のみが稼働する巨大ハウスが全面オープンすると、さらに10人が必要だ。

 山中組合長は語る。「周りは田んぼをやりたくてもやれない状態。夏になると草が生えてひどい。そんな状況で人の気持ちも荒れてきている。立ち上がれるものから立ち上がり、周りを引っ張っていかねば」

企業財団から支援を受けたトラクターと島さん

 「将来は野菜も作って年間雇用を実現したい」。新法人の1つ「飯豊ファーム」代表の島光春さん(57)は目標を話す。やはり企業財団の支援で、6月までに大型トラクターなど1億7000万円分の農機具が交付される。

 昨年は津波をかぶった田10ヘクタールで試験的に大豆を栽培、放射能の影響を考えて土が付かないように中段刈りをし、5トンを収穫した。放射能は不検出だった。今年は40ヘクタールに広げ、オペレーターなど2〜3人の雇用を考えている。

 地域は高齢化し、農機具を失った人もいる。「住民の雇用の場となり、集落に利益を還元したい。農家でない人も取り入れ、地域の農地を守っていきたい」

除染しながら収穫
 農家の復興への努力の一方、放射能との闘いは続く。福島県内の米は昨年産から全袋検査を行うが、津波被害を受けなかった同市内のある米農家は注文販売の客が3割減った。農家の男性はつぶやく。「放射能の解決が一番心配。この先、また爆発でもしたら」

 同市特産のナシ農家は、津波被害がひどかった磯部地区で37戸のうち7戸が離農した。残った農家は、木を水で洗い、表皮を削る除染作業をしながら収穫を続けている。「産地をなくしてはいけない」と同地区の根本賢さん(55)。「食べ物として安全だから食べてくれる。そう確信して作物づくりをしている」
(おわり、小林祐己)



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