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【年間キャンペーン 350万市場への道】第3部 無料化スタート−中−

2010年07月04日 15時14分

道東道に向かって伸びる道道夕張新得線(畜産試験場付近)。スマートIC設置を目指した活動が続けられている

−持たざる自治体−
集客ツール「IC」
懸念あらわに設置要望

 「高速道無料化社会実験スタート後の最初の週末を迎え、利用者が増えました」−−3日午後、テレビから流れる道東道のニュースを見ながら、新得町内で飲食店を営む男性はため息をついた。

 「道東道が延びた3年前から売り上げは極端に減っている。良いときから見たら2割以上かな。昨年からは団体旅行のルートを変えた旅行会社もあり、ますます国道38号の交通量は減っている。無料化がいいのか悪いのか、まだ判断がつかないよ」

08年売り上げ5〜15%減少
 町内を高速道路がかすめるだけで、IC(インターチェンジ)もない新得町。2007年10月に十勝清水−トマム間、09年にトマム−占冠が供用開始され、道東道の利便性が増す一方で、「十勝の玄関口」である同町は地盤沈下を実感している。町商工会はトマムまでの延伸に伴い、08年に会員企業への影響度調査を行った。「影響があった」は3割で、この大半が「5〜15%程度売り上げが落ちた」と回答した。トマム−占冠間開通、無料化社会実験スタートで、さらに“悪化”しているのは確実だ。

 打開策はあるのか。町では道東道建設当初から国や道にIC設置を働きかけてきた。候補地の一つは市街地から5キロほど離れた畜産試験場の敷地内だ。08年、町、国、道の出先機関、高速道路会社による「調整会議」を発足させ、勉強会や候補地の現地見学会などを行った。今年5月には「スマート(簡易)IC」早期設置を求める経済団体が住民の意向調査のためのアンケートを実施するなど積極的に活動している。児玉浩己商工会長は「通過する人を引っ張る一つのツールがIC。休日割引などの影響で狩勝峠の交通量が減る中、町が観光の玄関口としての役割を果たし続けるためにもICは絶対必要」と力を込める。

 IC設置を求める動きは新得町に限らない。音更帯広IC、池田ICまで距離のある十勝川温泉旅館組合なども「長流枝PA(パーキングエリア)」をスマートICに“昇格”させ、「十勝川温泉」への名称変更を求めている。今年のゴールデンウイーク期間中、十勝川温泉の入り込み客数はほぼ前年並みだった。観光客が阿寒方面へ通過してしまうことへの懸念を強めている。十勝川温泉観光協会の林文昭会長は「『温泉』という名称のICは例がなく、十勝川温泉のイメージアップはもちろん、ICができれば帯広や幕別住民の利便性も高まる」と説明する。

先行き不透明「総合判断を」
 期待の集まるスマートICだが、政府の方針ははっきりしない。「ICのない市町村などへの整備に重点を置き、おおむね200カ所以上にスマートIC整備を目指す」(高速道利便増進計画)となっているが、先行きは不透明だ。

 地域の経済事情に詳しい帯広信用金庫の秋元和夫地域経済振興部長は「ICのあるところは確かに大きな経済効果を勝ち取る可能性がある。ただし、ICを作ったからと言って何かがそこに出てくるものではなく、失われるものもあるかもしれない。費用対効果も考えながら、総合的に考える必要がある」とアドバイスする。

 新得町内には「無料化で交通量が増えれば『出入り口を増やした方が良い』『短い区間でもICを作ろう』との方向になるのでは」との楽観論がある一方で、「ICの具体的な話が進んでいるわけではなく、現実的なものじゃない。農産物の直売など既存の資源を生かした戦略を考えるべきだ」(商業者)という冷静な目もある。無料化社会実験の行方は、“持たざる自治体”に重い課題を突きつけている。
(犬飼裕一)

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