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【リーダーの視点】藤丸社長 藤本 長章さん
藤丸は今年、創業110周年を迎えた。冬の時代を迎える百貨店業界にあって、今や道東で唯一、道内でも地元資本は藤丸だけになった。生き残りをかけ、地域密着や道東戦略を打ち出す藤本長章社長に、地方都市の百貨店が目指す方向、中心市街地活性化の方策などを聞いた。(聞き手・安田義教、写真・塩原真=毎月最終金曜日に掲載)
顧客と「1対1」の信頼を

「地域密着で泥臭く」。顧客満足度の向上を追求する藤本社長
「生活提案」で差別化図る
−全国的にデパートは冬の時代を迎えている。藤丸の現状は。
ここ数年の決算は減収だが黒字は続いている。売り上げだけを見れば、お客様の消費行動、マインド自体は厳しいと感じる。しかし、デパートへの熱烈なファンがいるのも確か。遠方からも時間をかけて来てくれる。
インターネットが普及して、生活必需品は自宅から何でも手に入る時代。ただその中でも衣服だけは「実際に見て、着てから選びたい」という要望がある。デパートに求められているものだ。プロの販売員が親身にアドバイスして、満足度の高い商品を買っていただく。それこそが店を構えることの大事さ、満足度につながる。この部分にもっと力を入れる必要がある。
−道東唯一の百貨店となって、創業110周年の節目を迎えた。
ある百貨店の店長には「地域密着の実需に合った品ぞろえ」といわれた。藤丸を支援する会など、応援してくれるお客様のいることが心強い。釧路や北見、苫小牧など各地で百貨店の撤退が続く中でも、地域に密着した商売に徹しているからこそ、生き残ってこられたと思っている。
釧路や北見など道東各都市からのバス運行は3年目になるが、リピーターも付いて、継続してできている。今後はきめ細かく気配り・目配りをしていけるか。
一方で、十勝のお客様の「足元対策」もしっかりやりたい。バス券プレゼントは約2000人に配布し、反響は大きかった。高齢化社会の中で交通弱者は増える。その方々にも支持されるデパートを目指したい。
−道央圏にはアウトレットモールがオープンし、道東道開通後は競合が予想される。
アウトレットには、藤丸にはないインポートブランドなどが多くある。ただブランドの在庫商品の中に、お客様が本当にほしいものがあるかどうかが疑問。“その年の新商品”はデパートにある。お客様は「買い回り」していて、敏感だ。札幌のデパートも(客の)戻りは早かったと聞く。
激しい競合の中で、最後にお客様が店を選択する基準は人間関係だと思う。「1to1」の信頼、泥臭さ。そのビジネスモデルに立ち返り、堅持する。お客様の需要を取り込みながら、品ぞろえとバランス良く進めることがポイント。
また、今は足元の掘り起こしを探っている。私たちのお客様の世代は団塊世代が中心。販売員より年配の人たちに説明するには、ただの商品知識だけでは足りない。話を聞いて相手の関心、世界観など知り、商品を勧めていく「生活提案型」のコーディネートが必要になる。それはインターネットショッピングではできないこと。これからの時代、そういった対応ができるよう、人材に厚みを加えていくことが生き残りにつながる。

1982年から現在地に建つ藤丸ビル。今も中心市街地のシンボルだ
−創業110周年でさまざまな企画を展開中だが。
記念催事は3月の「Fカード誕生祭」から本格的にスタートした。開始2カ月を終えて、3、4月は良い数字が出た。現在は従来行っていた催事に110周年の冠を上乗せる形を取っているが、夏場に向けては新たな展開を考えている。
−具体的には。
1つは「藤丸特撰カタログ」。取引先などを通じて、十勝や道内産の食のギフトを、“藤丸発”で展開していく。地元産品の消費を促す、帯広商工会議所の「バイ十勝運動」の取り組みにも通じる。7、8月は夏物を中心にし、創業月の11月までさまざまな企画を行いたい。
キャッチフレーズに「チャレンジ」を掲げた。110周年をただの記念行事だけに終わらせたくなかったからだ。今をよしとせずに、もう1回、前に出て行き、発信しようとの気持ち。元気なところを見せ、お客様に安心、信頼してもらう。チャレンジする会社にしたい。

ホコテン(歩行者天国)は5年目を迎えた。個店への恩恵など課題は指摘されているが、互いの信頼関係ができてきて、一緒に何かやろうというムードができているのが強み。かかわる人たちに一体感ができてきた。藤丸のFカードをベースに、相互にポイントが付き、交換できる仕組みも検討している。商店街とコラボレーションすることで、中心部に出てくる魅力が増すと思っている。
−中心市街地の課題、活性化策は。
1つひとつの動きは出ているが、それをコーディネートすることが必要。農商工連携、産学官連携もそうだが、それぞれを“横ぐし”で刺すようにして問題点を抽出し、解決策を探れれば。例えば昼のホコテン、夜の北の屋台を組み合わせた市街地の活性化も考えられる。今あるものを上手に連携させれば、「十勝型」と言える取り組みが生まれるのではないか。
プロフィール 1953年帯広市生まれ。学習院大卒。伊勢丹に入社し、新宿店勤務を経て、78年、曽祖父の長蔵氏が創業した藤丸に入社。87年から社長。帯広商工会議所の副会頭、帯広まちなか歩行者天国(ホコテン)実行委員長などを務める。景子夫人との間に3男。
<取材を終えて>
かつて「小売りの王様」と言われ、いまは全国的に苦戦が続く百貨店。地方都市の市場規模は限られるが、足元の掘り起こしと管外からの集客を図る藤本氏に、後ろ向きな言葉はなかった。藤丸のない中心街は想像しにくく、応援する市民団体も熱心だ。110周年の今年のテーマには、客への恩返しだけでなく、チャレンジを掲げた。創業記念だけに終わらせない、新しい企業価値創造の取り組みに注目したい。



