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【あの日あの時−十勝ひと物語−】 前ホクレン会長 矢野征男さん(3)
トップセールス
「道内農業」売り込みへ奮闘
道内の農業5団体の役員は地域で選考された候補者を総会に諮って決めています。組織の取り組みだから推薦されれば、引き受けねばと覚悟しました。ホクレン副会長に就任した時は、見知らぬ職員を使って道内の農業を背負うのかと思い、気が引き締まりました。
最初に担当したのは米、麦、豆、デンプン、野菜などの耕種部門です。道内の年間農業生産額1兆1000億円のうち、ホクレンの取り扱いは9000億円、北海道は気候変動による豊凶の差があり、販売面では、安定供給が大きな課題なのです。
1993年は大凶作となり、小豆の作柄は平年の半作にとどまりました。価格は1俵(60キロ)2万円が7万円に跳ね上がり、小豆の大手取引先で、全国的にも有名な和菓子屋が中国産小豆を使う話を耳にしました。海外産が使われると国内産に戻すのが難しく、「これはまずい」と思い、社長に面会を申し入れました。
会えたのは翌年の2月。最初は、にこやかだったのが、「原材料不足はわれわれにとって死活問題。どう考えているのか」と詰め寄ってきたのです。「もう迷惑をおかけしません」と頭を下げたが、その年の作柄が心配でした。不作だったら、首をくくらねばと悲壮な思いに陥りました。
農作物販売には、天候のほか、海外農産物の輸入動向や景気、府県の作柄などの要素が絡みます。営業担当者には取引先と絶えずコミュニケーションを取り、産地の状況を伝える一方、消費者の要望を産地に流すよう指示し、「信頼される営業マンになってほしい」と呼び掛けました。
トップセールスにも励みました。トップ同士が通じていれば、営業活動もしやすくなるからです。ホクレンの取引先は2000社以上を数え、道外へ出張の折には最寄りの支店を通じて、取引先トップとの面談を申し込みました。ホクレン在職中の18年間で航空機の利用は750回。用途は営業と農政活動が半々ぐらいでしょうか。
大手企業の方と接する機会は多く、伊藤忠商事の丹羽宇一郎さん、日清製粉の中村隆司さん、米卸、神明の藤尾益也さん、三菱商事の佐々木幹夫さん、山崎製パンの飯島延浩さんらとは親しくしました。
立場のある方々ですが、人間、心を開いて接すれば、親密になれるものです。ホクレン退任後もお付き合いをいただき、ありがたい限りです。(聞き手・平野明)
−ホクレン農業協同組合連合会−
1919年設立。農協の経済事業を担い、農畜産物の集荷、加工、流通、販売をはじめ、農業生産に必要な資材、技術などを提供する。2008年度の取扱高は1兆4946億円。全国的には、全国農協連合会(全農)−都道府県経済連−単位農協の3段階から全農−広域合併農協の2段階へ再編が進められているが、ホクレンは取扱高の大きさなどからホクレン−農協の2段階完結とし、全農の再編にはくみしない方針を決めている。
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