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【年間キャンペーン 350万市場への道】第1部 国内先進地ルポ−5−

2010年01月08日 14時47分

温泉街−大分自動車道(大分県)

「ここだけの食」で勝負

 九州北部の山並みを縫うように横断する大分自動車道(延長137.8キロ)。トンネルを抜けると、神秘的な朝霧に包まれた別府温泉。辺りは硫黄のにおいが立ち込め、無数の湯煙は古い街並みの風情と一体化している。

「観光は生命線」
 同温泉には2900の源泉と400の旅館、共同温泉が密集する。別府市観光協会総務部長の大塚直登さん(32)は「大半の市民が観光関連産業に携わる。観光はまちの生命線」と力説。高速道路のETC(自動料金収受システム)休日特別割引が始まった昨年3月以降、大都市・福岡などから入浴客が詰め掛けているという。

高速道のETC割引を機に、地元ならではの「食」で宿泊客を呼び込む別府温泉

 しかし、大塚さんの表情には険しさも浮かんだ。「確かに日帰り客は増えたが、宿泊客はかなり厳しい」。高速道で訪れる観光客をいかに滞在させるか。源泉数、湧出(ゆうしゅつ)量とも日本一の泉都が選んだのは地元の「食」。「別府とり天」「別府冷麺(れいめん)」を大々的に売り出すことだった。

 今年度は市と市旅館ホテル組合連合会、市民団体が連携して「別府『食』観光推進プロジェクト」を開始。昨年10月に同連合会が発行した「別府食(グルメ)新聞」(タブロイド判、4ページ)はスポーツ紙さながらの迫力で、「プロジェクト始動!!」を伝える大見出しと冷麺のアップ写真に目を奪われた。

立ち上がる地元民
 1926年に県内で初めて開業したレストランが発祥の「別府とり天」は、その名の通り鶏肉のてんぷら。今はたいていの飲食店の品書きに並ぶ定番で、ニンニク風味が効いておいしかった。約60年前に誕生した「別府冷麺」は「第2のとり天」とも言える存在。温泉街では専門店、ラーメン店、焼き肉店など約60店が秘伝の味を競っている。

 大塚さんは「ETC割引はわれわれにとって追い風で、高速道無料化が実現すればさらに強力。ここにしかないものを押し出したい」と強調した。別府温泉の昨年度観光客数は延べ1151万人。これほどの集客力を誇りながら貪欲(どんよく)な取り組みを貫く姿勢に、頭が下がる思いだった。

強み生かす戦略
 大分道沿線の由布院温泉もETC割引効果に沸く。割引前の2008年9月に7万2750台だった湯布院インターチェンジの通行量(出口観測)は昨年9月、8万925台に増えた。

 「豊後富士」と呼ばれる雄大な由布岳を一望できる温泉街では、名物の辻(つじ)馬車がひづめの音を響かせていた。「豊かな田園環境を守り、欧州型の長期滞在観光を根付かせたい」。由布市商工観光課の梅尾英俊課長補佐は高速道需要の高まりを意識した将来展望を語った。

 形は違っても、地域の資源や強みを生かそうとする両温泉の戦略は一緒。十勝にも全国に誇れる「温泉」「食」がある。効果的な情報発信などを積み重ねれば、巨大市場・道央圏の消費者を必ず引き寄せられると確信した。(菊池宗矩、おわり)

 別府「食」観光推進プロジェクト
 別府ならではの食文化を生かし、温泉との相乗効果で観光振興を図る。各店のとり天の味や料金などを“極秘調査”する市民団体「とり天Bメン」が協力、昨年10月に「別府とり天マップ」を作った。「とり天Bメン」と同様の活動を行う女性グループ「別府冷麺団」も誕生、全国紙やテレビで紹介されている。別府食新聞は別府冷麺地図を兼ね、3月には情報量を増やした冷麺マップを発行する予定。

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