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【ここで暮らす 地域の現場から】(5)過疎の不安

2009年08月16日 14時40分

高齢者46% 迫る「限界集落」の影

「こんな地域あること、忘れないで」
 コンブ漁は夏場の今が最盛期。ここでは70歳代も“現役”だ。住民がこぞって漁場に向かい、海岸沿いは活気を見せる。逆に、まちなかは人影がなく、波音とカモメの鳴き声だけが耳をつく。広尾町音調津。国道336号・黄金道路に面し、太平洋の恵みに生きる漁村だ。

コンブ漁の時期になると、まちなかは人もまばら。音調津地区にも限界集落の影が押し寄せている

 戦前は漁業のほか、黒鉛などを産出する音調津鉱山でにぎわいを極め、「700人近くが住んでいた」(地元の83歳男性)。しかし、現在はわずか198人(7月末現在)。若者は次々と地域を離れ、65歳以上の高齢者が46.5%を占める。人口の半数が高齢者で地域コミュニティーの維持が困難とされる、いわゆる「限界集落」の影がひたひたと迫る。

「音調津の現状」将来はどこででも
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商店も、学校も
 唯一の商店は5年ほど前に閉店。広尾方面に向かう民間バスは1日3本で、マイカーのない高齢者は週に1、2回、同地区を巡回する移動スーパーが生活の頼りだ。2007年、音調津小中学校が閉校し、今年4月からは保育所も休止。郵政民営化後、地元郵便局の局員数も半分に減り、住民の間では「採算が取れなくなったら…」と不安がぬぐい去れない。

 「自主防災組織を作ったものの、高齢者が多いこの地域で、いざというときに機能するのか…」。地元・音調津町内会長の吉田正さん(63)はため息をつく。

 津波や大しけなど常に付きまとう自然災害の脅威。黄金道路は大雨になれば通行止めとなり、地区は文字通り「陸の孤島」と化す。しかし、自主防災対策にはマンパワーの絶対数の不足が立ちはだかる。「避難所の除雪もままならない。限られた若い人に負担を押し付けるわけにもいかない。国はこんな地域もあることを忘れないでほしい」と、吉田さんは訴える。

 道が昨年8月に公表した「過疎地域・高齢化集落状況調査報告」によると、限界集落は道内6629集落中、570集落で、十勝管内では55集落。さらに報告書は、「10年後には道内の3分の1を超える集落」が限界集落化すると予想する。町議で同地区に住む山谷照夫さん(64)は「音調津の課題は、将来どの地域も直面する可能性がある」と指摘する。

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駐在「当面存続」
 そんな同地区にも6月、明るい便りが届いた。地域を挙げて陳情や署名活動を展開してきた音調津駐在所の「当面存続」が決まったのだ。小中学校の閉校後、自主的に取り組む地域運動会も3年目を迎え、定着し始めた。町のスクールバスも今年度から、高齢者利用が可能となった。

 吉田さん方では今年春、息子が漁業後継者として故郷に戻った。「50年後、100年後に、『音調津ってマチが昔あったなあ』なんて言われないように頑張らないと」
(長田純一)
(おわり)

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