特集
【ここで暮らす 地域の現場から】(4)流れる消費
2009年08月14日 15時47分
大型店へ買い出し、商店に打撃

「土・日曜日は平日に比べて3〜4割ほど客数が減っている。帯広や音更の大型店に押しつぶされないよう、こちらも必死だ」。上士幌町でAコープ上士幌店を運営する地元商店の専務、星仁さん(42)は表情を曇らせる。
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高速道路に車列

上士幌町内の商店で買い物をする近間さん夫妻。帯広、音更へも買い出しに行くが、「できるだけ地元でも」と心掛けている
管内町村部から、音更・木野、幕別・札内の両地区を含む帯広圏への消費流出は深刻だ。東部のある町では、週末の午前中、帯広圏へ向かう高速道路の入り口に車が列をなして吸い込まれ、夕刻には買い込んだ品物とともに帰ってくる光景も珍しくない。折からの景気低迷、人口減も加わり、地域の商環境はさらに厳しさを増している。
消費の流出は同じ町の中でも起きている。音更・本町地区の商店街では、木野地区に集積する大型店の影響でスタンプ会の売り上げが激減。最盛期の約半数になった24店の多くは、後継者もいない。本町地区の関係者は「大型店に根こそぎ持って行かれ、商店街は壊滅状態。このままでは地域の崩壊にもつながる」と危機感を募らせる。
商品券や地域通貨展開も 決定打なく
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「町内使いたいが」
一方、消費者にもそれぞれの事情がある。上士幌町で妻と息子の3人で暮らす近間辰郎さん(81)は「生活費が限られるから、少しでも安いものを買いたい」と、1週間から10日に一度、音更・木野地区や帯広の量販店・大型店を訪れ、冷凍食品や干物などの食料品を買い込む。
町外での買い物はガソリン代もかかる。地元ですべてを賄うことができれば、「それに越したことはない」(近間さん)。遠くまで足を延ばすのは、少ない年金で長期的にやり繰りするための“生活防衛策”だ。
同じく上士幌町で酪農を営む菅原博治さん(61)も、息子3人が独立するまで「帯広や音更の安売り店を探し回った」という。食べ盛りの子供たちには月に約50キロの米が必要。「酪農家も月給制でやり繰りする。気持ちの上では町内の商店を使いたいが、高い価格では生活できない」と打ち明ける。
管内の多くの商業関係者は、大型店の出店規制が事実上、解かれた旧大店法廃止と大店立地法施行(2000年)を「消費流出が始まった転機」と振り返る。町村の商店も手をこまねいているわけではない。有志が「インターネット商店街」を開設したり、商品券を発展させ、町内全体で使える地域通貨にするアイデアも出る。ただ、地域の疲弊は根深く進み、“決定打”は見いだせない。
苦境の中でも星さんはこう話す。「従業員の生活も守らなければならない。安売りに対抗するためにも、生鮮食品を絶やさないという店の特色を出し、お客さんに喜んでもらうこと。それが生き残りに向けた手だてだ」−。
(井上朋一)
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